短編

□夜桜より
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青田 柊生(あおた しゅうせい)

世界的に有名なデザイナーであり、俺の恋人。
今年で確か47歳って言ってたっけ。

30歳の年の差だけど全く気にならない。
まぁそれは柊生さんが若々しいからだと思うけれど。父親とそんなに歳も変わらないし、家族以外の他人には明かしてない秘密の恋。
まぁ家族は受け入れてくれた。
父さんとは偶に飲みに行ってるみたいだし。



「柊生さん、外行きたいです」

「まだ熱が下がってないから我慢しなさい」



パソコンを弄る手を止めずに背中を向けたままそう言う柊生さん。
俺は昔から身体が少し弱くて熱を出して寝込むことが多かった。酷ければ入院してしまうほどで柊生さんと付き合い出してからも病院の世話になることもあった。


「でも、桜見たいです」

「お昼見ただろう?」

「夜桜がいいんです」



布団にくるまりながら駄々を捏ねる俺に柊生さんは漸くパソコンを弄る手を止めた。


「全く……、君の熱が上がって苦しむのは君だよ?」

「でも今見ないと桜散っちゃうじゃないですか」

「先日、咲き始めたばかりだよ。そんな簡単に散っても淋しいだろう」


俺の頭をゆっくり撫でてその手をそのまま頬に滑らせる。ひんやりしていてとても気持ちいい。


「しゅ、せ……さん」

「ほら、もうお休み。明日、見ようね」

「はぁい……」


目を閉じた俺は唇に彼の熱を感じて眠りに堕ちた。




「夜桜より君の方が綺麗だよ」




End

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