短編

□暗闇ノ中
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「……これ止まっちゃったかな〜?」

「……かもな」



シーンと静まり返るエレベーター内。
その内にパチンと室内の電気も消えた。



あ・・・やばい・・・




「んーと、緊急ボタンは…げっ、故障中ってまじか〜。ねぇ、柚ちゃんどうする〜? ……って、柚ちゃん?」




足元がぐらつく。
今、自分が、何処に、立っているのか、分からない。

呼吸って、どう、するん、だっけ……


怖い、怖い、怖い、怖い、……!!



「柚ちゃん、柚ちゃんしっかりしてっ…!」


座り込んでしまった俺を会計が揺さぶる。
俺の異変に気が付いたのだろう、いい加減だった顔付きから真剣なものへと変わった。


「柚ちゃん、こうすると安心しない〜?」



会計がふわりと俺を抱き締める。
背中に回されたその手は優しく撫でてくれる。



「あ、うぅ、はっ…、や、」

「大丈夫だよ〜、ふくかいちょーに連絡したらすぐに向かうってさ〜。柚ちゃん、大丈夫だよ〜」


一向に落ち着いてくれない呼吸に焦る。
生徒にこんな、こんな情けない……
せっかく築き上げた信頼が一気に崩れ落ちる気がしてまた、焦る。



「柚ちゃん、落ち着いて〜大丈夫、大丈夫だよ」



少しずつ自分を意識してゆっくりと吐いて吸ってを繰り返す。やっと呼吸が落ち着いた。
そしてパタリと会計の方にもたれ掛かる。


「柚ちゃん、大丈夫だよ」


背中から移動した手がゆっくりと頭を撫でてくれる。その手にまた、落ち着いて。
相手が生徒だとか、多分後で冷やかされるとかそんなの全部抜きにして、俺の意識はそこで緩やかに堕ちていった。
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