短編
□不安は白く溶かすように
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「央にぃ、寝れんっ」
そう言って勉強中の僕の部屋に入ってきたのはピアノのコンクールを明日に控えた従兄弟の槙野 紫紅だった。
「紫紅、ほら出来たよ」
僕は何故か泣きそうになっている紫紅をあやしながらキッチンへ。
紫紅お気に入りの青いマグカップに牛乳を注ぎ入れてハチミツを少し入れる。
それから2分ほどレンジでチンすれば紫紅が大好きなホットミルクの出来上がりだ。
「んぐ、…おいしぃ」
「そう、それは良かった..」
ホットミルクを飲む紫紅の横顔は少し浮かなくて多分明日のことでネガティブになっているんだろうなって思う。
「紫紅、明日……不安?」
「………うん」
沈黙の後に耐えきれないように出た声はいつもより震えていた。
きっとうまくいかないとか音外れちゃうとか考えてるんだろうななんて思ってマグカップを持つ紫紅の手を包む。
「大丈夫。だって僕の従兄弟だもん。絶対上手くいくよ。ずっーと今までだってそうだったじゃないか」
そんな風に諭せば紫紅は少し顔を上げて微笑んだ。
うん、大丈夫そう。
翌日のピアノコンクールには金のトロフィーを持った紫紅が満点の笑顔で立っていたとか..
End