短編

□sweet lover
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俺の恋人は


砂糖の入ってない紅茶を腐った水と呼び、

青汁に呪いの呪文をかけ、

世界に名を轟かせた有名なパティシエだ。










「あーー! やっばい! 砂糖の量間違えたー!!」


ドタバタ、ガシャンッ!


「うわー! 粉まみれーー! 津一(ついち)助けてー!」


人ん家のキッチンで何やってくれてんだ。

「…那古(なこ)さん、何やってんだよ」


俺が覗いたキッチンは


粉まみれで皿も割れてるキッチン










ではなく






どや顔の那古さんとひとつのホールケーキがある質素な俺の知っているキッチンだった。





「………は?」


「びっくりしちゃった? …世界の那古様が砂糖の量を間違えるなんてある訳ないでしょーが」


まぁそれは…そうだけど。
じゃあドタバタいってたのは何だったんだろうなんて疑問を残しつつ店でしか見ないような立派なホールケーキを見遣る


「で? このケーキ何? なんかのお祝い?」

「はぁ…やっぱり忘れてる」

「なんかあった? もしかして記念日かなんか?」

















俺がそう言うと那古さんは綺麗なスプーンで生クリームを掬い、俺の口に入れてきた。











「お誕生ケーキのお味はどう?」


「え、普通に美味し…あ? 誕生ケーキ?」


「そう! もう津一ってば自分の誕生日も忘れちゃって!」




あー、そういえば俺もう18なんだよなぁ。


「…ありがと」

「えへへ。どういたしまして♪」



そう笑った恋人はさっき食べた生クリームよりも甘くて綺麗だった。




End

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