短編

□取れかけたボタン
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俺はどこで選択肢を間違えたんだろう。


俺の目の前には厳つい顔をした男が3人。
物凄い形相で睨んでくる。
俺が何をしたというのだろう。




溜まり場を出て直ぐにこの3人が気弱な男を殴っている所を見つけた。
ゆっくり近付いていくと俺に気付いた3人。

何か文句を言われた気がしたがよく覚えていない。

3人は俺が何も言わないのが気に食わなかったのか殴っていた男を逃がして俺に殴りかかってきた。


もちろん俺はその拳をよけて代わりに男を殴った。

男はぐらついたが姿勢を変えると俺の顎を蹴り上げようとしてきた。
俺はよけようとしたが下がろうとする足に上手く力が入らずに中途半端に男の足が顎をかすった。
こんな事なら当たっていた方がましだったかもなんて思っているとすぐに囲まれてしまった。

そして冒頭に戻るわけだが……。





この3人は何がしたいのだろうか。
用があるのはあの殴られていた男では無いのだろうか。
それともただ単にリンチでもしていただけなんだろうか。


俺は3人に囲まれながらも別の事を考えていた。すると、




「おい! 何やってる!」




聞き覚えのある声が俺に耳に届いた。
この声は………


ガシッ


俺が振り返る前にその人物によって肩を掴まれた。














「俺の大事な弟に何の用だ…?」














その人物は俺の義兄でありながら理峰組の組の新神 大我(たいが)だった。
いや、声でわかったんだけど。





男達は「ひぃっ」と情けない声を上げるとその場からすぐに立ち去っていった。



なんだったんだろう。
自分の中の疑問が消えなくてモヤモヤしていると



「無事でよかった。…ったく、弥夜が知らせてくれなかったらどうなってたか」


「あんな弱い奴らにやられる俺でもないだろ。あ、そういえば弥夜が言ってたけど頻繁に手合わせしてんだってな。程々にしt「話を変えるなっ。弱いからなんだよ。隙をつかれて体を抑えられたら身動きなんて取れないだろ?」……………それは否定しないけど」


不貞腐れると大我さんは俺の頬を抓り「笑え」って言って自分で笑ってた。



「意味わかんない。……じゃあ俺は行くから。大我さんも早く戻ったら?どうせ弥夜と手合わせするんだろ?」



「お前なぁ…『大我さん』じゃなくて『兄貴』とか『兄さん』って呼べよ。いつまでも他人行儀だとこっちが固くなっちまう」


大我さんはそう言うけどやっぱり俺には出来ない。
多分だけど俺はこの人と…この人の家族とあまり一緒に居られない気がする。
そんな気がするから大我さんを兄貴と呼べない。


「いつかね」


「お前のいつかは信用ならねぇよ」


「じゃあね」


「おぅ、お前も早く帰ってこいよ」



大我さんの言葉に頷いて見せると満足してように笑って行ってしまった。






大我さんの姿が見えなくなると俺は小さくため息をついた。

早く……早く……忘れたいのにな…。





現実は時に残酷だ。
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