短編

□花のように美しい
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学side


苦しみ出して倒れてしまった奈帆梨を抱えて保健室に行く。


まだ顔を顰めて苦しそうにしている奈帆梨の頬をそっと撫でる。
ちゃんと見ているつもりだった。
いじめを受けてるのは知っていたのに……どうして何も出来なかったんだ…。




「帆鳥。ベッド空いてるか」

「小阪。………空いてるけど?」


保健医の帆鳥 智(ほとり さとし)
まぁ教師としては尊敬できないが奈帆梨をいじめてる奴らよりは人間性はある。

「だから言ったじゃねぇか。無理させんなよって」

帆鳥には奈帆梨の容態をさりげなく見るようにお願いしてた。
だから注意されてた…なのに……

「んぅ、んん」

俺の腕の中で奈帆梨が少し動く。
奈帆梨をベッドに置くと帆鳥が脈を確認していた。

情けないな、俺は。
奈帆梨の担任も副担も何もしないから俺が守ってやろうって思ったのに…。


「うぅ…」

「熱出てきたな。…おい、小阪。そこの棚から解熱剤出してくれ」

「おぅ」


熱が出てきたらしく奈帆梨の呼吸が速くなっていた。
俺が取ってきた解熱剤を飲ませると帆鳥は奈帆梨に布団をかけるとカーテンを閉めた。







































「で? どこに惚れた訳?」





「は?」






「奈帆梨君のどこに惚れたんですか、小阪センセ?」

「ほ、惚れ……惚れっ?!」

「……………大丈夫?」


「奈帆梨に俺が?」


「まさかの無自覚か、おい」


何故か帆鳥は頭を抱えた。
え、何?



「……………奈帆梨君が起きたらちょっと休んでから出てけよ」














帆鳥は資料を片付け始めた。

訳分かんね。




カーテンを開けて奈帆梨の顔を見れば紅潮していて…そんな奈帆梨を見て思う感情の名前を俺はまだ知らない。

花のように美しい綺麗な感情の名前を。



End
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