短編

□HAPPY BIRTHDAY
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直登side



あの横暴上司め……。パワハラにも程があるだろ。何でこんな時間まで資料のまとめなんかしなきゃいけないんだよ。




何となく開いた携帯にメールが1つ。
受信したのは6時半を少し過ぎた時間。今は9時少し過ぎ。

誰だろ。




《直登さんへ


今日は直登さんの誕生日だから直登さんの家で待ってます。メール見たら返事下さい

           凛太(りんた)











やっちまったぁ・・・


6時半から待ってるってことは3時間近く家で待ってるって事だよな?!
あー! こんなことならあの横暴上司に無理言って帰らせてもらえば良かったぁ!

あー…! ウジウジしててもダメだ!即効家に帰んねぇと・・・
泣いてないかな、凜太……

直登31歳、全力疾走です



────────────



家の前に到着。

うん、まだまだ現役だ。
全然息切れてない(嘘)。











家の前で深呼吸をする。










すーはー…………よし!



ガチャッ



「ただいまー……」

家の中に生活感の溢れる音は無し。
寝てるかなー…。


俺は荷物を置くため自室へ入ろうとした時

規則正しくて可愛い寝息が聞こえた。
電気を付けると
俺のベッドで丸くなっている愛しい恋人の姿が。
え、ナニコレ。新手の拷問ですか。
仕事で疲れてるっていうのにこんなの見せられたら吹っ飛ぶつーの。

「凛太〜・・・」

遠慮がちに声を掛けてみるけど当然のごとく目は覚まさなくて。
凛太は軽く寝返りを打つと

「なお、と……さ、」

って!!

やばい!
『さん』まで発してないから呼び捨てで呼ばれたみたいなんですけど!!
っていうか俺の息子が元気になってきちゃってるわー。
どうしよ。トイレ行きたい。


「んぅ……」

凛太がうすく目を開ける。
起こしちゃったか。

「あぇ? 直登、さん……?」

「ただいまです」

「…………………」

「り、凛太? ただいまー」

「はっ! ……お、おかえりなさいませ!」

ブフォッッッ!

メイドか、おい!
可愛すぎだろ!

「あ、直登さんあのね! 今日誕生日でしょ?だから――――」

あ、そうか俺今日誕生日か。
いくつになるんだっけ。32……か。
オッサンだなー。

「直登さん聞いてる? ……あ、やっぱ疲れてる…?」

上目遣いを駆使する凛太には適わん。

「聞いてるよ。なぁに?」

首を傾げて頭を撫でてあげれば顔を赤くして俯いた。
うん、可愛い。

「俺ね……バイトしてたの」

「うん」

知ってますよ。
まさかこの子俺が来店してたって気付いてないパターンですか。
うん、無自覚可愛い。

「お、怒らないの?」

「何で?」

「だ、だっていつもだったら怒るじゃん。その…可愛い凛太を…他の人の目に…晒したくない……って泣き喚くじゃないか」

「何それ、覚えてない(ニッコリ)」

「あ、その顔は覚えてる!」

あらバレた。














「ぁ…で、でね! 直登さんにプレゼント買ったの!」

「え、マジで?」

「うん!」

ホントは期待してましたなんて言えるかー!
まぁ何の記念なのか全然分かんなくて考えるのやめたけどな。
まさか俺の誕生日だったとは←


「あのね…………」

ベッドの脇にあったカバンを漁る凛太。
中から取り出したのは細長い箱。

「えっと、」

俺は凛太の言葉を待つ。

「さ、32歳の誕生日……おめでとうございます」

細長い箱を差し出されてそう言われた。
うん、天使だ。俺専属の天使だ。

「ありがと。開けてい?」

「あ、待って。目ェ閉じて」

「ん、こー?」






少しすると首元にひんやりとした感覚が走った。
ネックレス……?

「いーよ」

「これ、凛太が選んだの?」

「あのね、バイトしたときのお金だけだからあんまり高い物は買えなくてね。でも直登さんに似合いそうなのがあったらいいなと思ってたの。俺さ、直登さんにいっぱいお世話になってるから…誕生日の時くらい奮発しようかなと……」

凛太は凛太なりの言葉で頑張って伝えてくれた。


「じゃあお礼しないとね」

「え、」

チュッ

『お礼』に反応した凛太が顔を上げた時に凛太の唇にキスをした。
だって凛太、あんまりキスさせてくれないんだもん。
今日くらい良いよね。

「直登さん……俺も…する」

え、何!? 今日はやけに積極的だな。
誕生日って得だな。

「じゃあ濃厚なのお願い」

「え、……でも俺…直登さんみたいに上手じゃないよ…?」

うっはー!上目遣いktkr
何? 煽ってるんですか凛太君。

「いいよ。凛太からのキスが欲しい」

「じゃあ失礼します……」

凛太の顔が近付いてきて俺の唇と凛太の唇が重なった。
そして遠慮がちに凛太の舌が俺の口内に入ってくる。

「ん、んぅ…」

あ、この子息してないな。
鼻で息しろってこの前言ったばっかなのに。
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