短編
□イキシア
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「ねぇ、妃月、イキシアって花知ってる?」
何気ない休日の午後、俺の部屋の布団の上で俺より寛いでいる来夏がそう言った。
「イキシア……? なんだそりゃ」
「んーん。なんでもない」
その場限りの話題だったのか来夏はスマホをいじり始めた。
俺は来夏が好きだ。
多分どんな女に言い寄られても揺れない自信がある。
俺と来夏は中学からの付き合いで一緒にバカやってた仲だ。
いつの間にか好きになってた。
来夏が話しかけてくる度
来夏が笑いかけてくれる度
来夏が見てくれる度
好きになって
辛くなって
怖くなる。
「あ、やばい、こんな時間だ。電車あっかなぁ」
「帰んのか。急げよ」
「ういっす。そんじゃあまた今度ね!」
パタン…………
「馬鹿だな、俺は」
叶うはずのない初恋は俺を苦しめる。
来夏は好きな人を見つけて
幸せになって
俺は一人になる。
イキシア、本当は知ってる。
花言葉をテレビで見た。
『秘めた恋』
End