短編

□どこにいても
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「もういいよ! 平太(へいた)なんて知らない!」

「あー、そうかよ。だったら出てけよ」

「出てくよ! もう二度と帰ってなんか来ないからな!」

「おう、そうしろそうしろ。俺もお前なんか居ない方がマシだよ」







バタンッ!!!

























喧嘩しちゃった………。








今まで喧嘩したことなんて一度もなかったのに…とうとう言われちゃったか。



『お前なんか居ない方がマシだよ』



だってさ。



うわ、どうしよう。涙出てきた。












分かってるよ、分かってる。

平太はモテるし女の子たちがほっとかないのが分かるけどさ……

何で俺が帰ってくるの分かってるのに女の子と二人きりで部屋に居るんだよ。

嫌味なのか?
何であんなに笑ってたんだよ。
俺と一緒にいる時はあんまり笑わないくせに。

あーもー、馬鹿みたい。
どうせ別れちゃうんだからこんな女々しい事考えちゃダメだよな。







平太なんかもう知らない。





























「お兄さん1人〜?」
「良かったら遊ばない?」
「俺達と」


とりあえず行くところがなくて駅をウロウロしていたけど結局公園のベンチに腰を下ろすことになってしまった。
そんな時に声をかけてきた奴らがいた。
これっていわゆるナンパってやつ?



「暇じゃないしあっち行ってよ。俺なんかより女の子と遊んだ方が楽しいよ」


昔からこういうのには絡まれるんだけどいつも平太に助けてもらってたんだよな。
これからは一人で切り抜けなきゃいけないんだよな。




「そんな固いこと言わずにさ〜」
「そうだよー楽しーよー?」
「モノは試しでしょー?」



意味不明。



「俺忙しいんだ。遊ぶなら他を当たってよ」




俺が立ち上がろうとした時


ビリリッ


首元に電撃が走った。
ぇ……スタンガン……?



「大丈夫〜怖くないよ〜」
「お兄さん達とキモチイイ事しようね〜」







やだ
やだ
やだ










薄れていく意識の中で俺は最後に愛した人の名前を呼んだ。



「へい、た………」



「何やってんだっ!」


この世で一番愛している人の声が頭の中に響いて俺は意識を失った。
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