短編

□そばにいるから
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《死にたい》



液晶画面に映ったその文字に俺は家を飛び出した。










《今行く。死ぬな》






間に合え・・・!

頼む、間に合ってくれ!





《着いた。鍵開けろ》

掛かった時間5分。
お隣の濱地 心(はまじ まこと)の家に到着。


カチャ

キィー


ドアが数センチ空いたところに足を滑り込ませる。

「おい、逃げんなよ」

低い声で脅しかければ開けた主はゆっくりとドアを全開に開けた。















「で、死にたくなくなったか」

「徹が帰ったら死ぬ」



ハァとため息をついたのは心の部屋のソファーに偉そうに座ってる俺、銀川 徹(ぎんかわ とおる)だ。

心は昔からネガティブ思考で勝手に自己完結して自傷行為を繰り返す奴だった。
俺はそんな心を昔から見てきた。
心の家を出入りする白衣を着た人も見たし、心が暴れて人を怪我させてるのも見た。それに酸素マスクをつけられて病院のベッドで寝ている心を見たこともあった。
心はあまり笑わなかった。
人付き合いも良くなかった。

イジメにもあった。



俺はそんな心を昔から見てきた。
イジメっ子から守ってきた。
笑うようにふざけたこともあった。



いつしか心には俺。俺には心。

それが普通になっていた。
それが当たり前になった。

日常生活の半分を心と過ごした。






思春期もコイツと迎えた。

学校にも行っていたが俺も心も他の奴と関わらなかった。
ホモやら何やら騒がれたがそんなことはどうでも良かった。



いつからだろう。

俺たちはそういう関係になった。

若気の至りってやつだと思ったが嬌声をあげるコイツをもっと見てみたいと思ったし、この関係が悪くないとも思った。


大学に入ってもこの関係は続いている。










「徹………チューして」

「したらやめるか?」


「多分……」


少し自信なさげだな。












「ンッ……あんァ…ふァ…」



「馬鹿。もっと舌出せ」


「そんなこと言われても……んんっ」


可愛い。

もっと聞きたい。





でもまぁ




「勃ってる」


「言わないで……」


「これ以上して欲しいんなら、1週間自傷行為禁止令が守れたらいいぞ」


これからずっとなんてレベルの高いこと言わないからこれぐらいは守ってくれ。


心は頬を紅潮させながらコクンと小さく頷いた。



よくできましたの印に噛み付くようなキスをしてやる。

「ゥふァ……んんっ、ァん」


「おしまい」



少し寂しそうにした心の頭を撫でてその日は一緒に寝た。

























1週間後

自傷行為禁止令を守れた心が積極的になって俺の理性をぶっ壊したのは言うまでもない。



End

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