短編

□謎解き迷路
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探偵Bside























あー、ここ知ってる。

あの子と一緒に来たんだっけ。
名前忘れちゃったけど。

いや、僕が作ったんだけどさ。



「お、石盤はっけーん」


《思い出の人物を答えろ》


意味分かんないし。
………ってか問題変わってるし。



昔は計算問題だったのに。
誰だよ、変えたの。


「まぁいいか。……父さん」

ピンポーン!!

「母さん」

ピンポーン!!

「………あの子の名前なんだっけ」

十年前、ここで一緒に謎解きをした子。
自分で作ったのに僕も出られずに泣いちゃったっけ。
でもあの子は……僕を慰めてくれて。


「………あの子」

ピンポーン!!

え、いいの?


『あの子』としか言ってないぞ。



《次の石盤を探してね》

あー、そうだった。そうだった。







『俺は――――――。――――――でいい』


うわぁ。肝心な所だけ分かんねぇ。
まぁ十年前だししょうがないんだけど。
なんかもやもやするなぁ。


『あったよ、これだろ』


あ………



今一瞬だけ

石盤を指差す無表情のあの子が居た。

瞬きをするともう居なくて。



まるで導かれてるみたいだ。
懐かしい。

あの子が居たから僕はここから出られた。
あの子が居なかったら僕は出られなかった。

馬鹿だな僕。

探偵さんが一人の人間に執着しちゃダメじゃないか。
客観的にモノを見ないと謎解きなんて出来やしないのに。


「…………あの子はここにいるのかな」

居る気がする。

あの時はそうだ。角を曲がるとあの子とぶつかって……一緒に出ようって言って。



「………一緒に、か」

僕は苦笑いして石盤を覗きこんだ。



《約束の内容を全て答えよ》



















約束…………?




そんなの知らない……










僕は知らない………





あの子は?










知ってるかな。











約束………なんかしたっけ。



















あの子は知ってる気がする。
ここに居る気がする。





探そう。


あの子を。














僕は走った――――――――
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