短編 壱
□にゃんこ審神者主
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和泉守兼定と堀川国広
時は西暦2205年。
歴史の改変を目論む「歴史修正主義者」によって過去への攻撃が始まった。
時の政府は、それを阻止するため「審神者」なる者を各時代へと送り出す。
審神者なる者とは、眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる、技を持つ者。
その技によって生み出された付喪神『刀剣男士』と共に歴史を守るため、審神者なる者は過去へ飛ぶ――。
これはとある本丸のお話。
「にゃん」
白猫が廊下を行く。
首には緑色のリボンをつけており、その毛並みは毎日手入れされているのかとても美しい。
「お、主じゃねぇか。主も日向ぼっこか?」
「にゃー」
縁側で日向ぼっこをしている和泉守兼定は白猫を「主」と呼ぶ。
そう、この白猫こそがこの本丸の「主」であり、刀剣男士を生み出す「審神者」なのである。
「実は馬当番なんだけどよ、国広の目ェ盗んでサボってん、だァッ!?」
「やっと見付けたよ! 兼さん!」
「だから内緒にな」と続けようとした和泉守の頭をぶっ叩いたのは堀川国広。少し怒り気味の堀川は和泉守の傍に愛しき主がいるのに気付いたようだ。
「兼さん、狡い! 主さんとサボりなんて!」
「主も今来たばっかだっつの。つーか、手加減くらいしろよ。一歩間違えりゃ軽傷になってたぞ」
「馬当番なのにサボる兼さんが悪いよ! ねぇー、主さん」
「にゃー」
和泉守の非難に堀川は気にすることなく審神者に同意を求め、それに白猫も鳴き声を零す。
「ほらぁ」と和泉守を見上げる堀川に白猫はまた鳴き声を上げた。
「にゃー」
「え!? 本当に!?
やったー! 兼さん早く馬当番終わらせちゃおう!」
「は? 主、なんて言ったんだよ」
「にゃー」
「いや、だから分からねぇって」
「兼さん早く!」
審神者の言葉は本丸に居る期間が長いほど理解出来るらしい。
最近来たばかりの和泉守は首を傾げながら堀川に連れて行かれてしまった。
「主さーん! 約束だからねー!」
今日も今日とて白猫は。
本丸で一番陽当たりが良い場所で陽が傾くまで眠っていましたとさ。
終