短編 壱

□死んだ目主
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ひとりぼっち3







最初から両親は居なかった。
気が付けば3代目火影がそこに居て俺の頭をずっと撫でていてくれた。

アカデミーに入った時も
中忍試験に合格した時も


俺は『ひとりぼっち』だった。
そんな時に声を掛けてくれたのが波風ミナトだった。




「大丈夫?」

既に発作が始まっていた俺はまた唐突に始まったそれに嫌気が差しながらも人気のない路地に入ってソレを治めていた。

そんな時に降ってきた声に俺は



「……だ、れ」



ひどく聞き覚えがあったはずなのに苦し紛れにそう聞いていた。



「波風ミナト。君のクラスメイトだよ」


そいつはいくら跳ね除けたって俺を抱き締めて背中を叩いてくれて、大丈夫だと囁いてくれた。



「……はぁ、はぁ、」

「大分落ち着いたね。いつもそうなの?」

「………あぁ」

「そっか、薬とかは無いんだね。それじゃあ苦しいよね」



そう言ったあとにミナトは確か。



「それじゃあ―――、


――――――――――――?」






あれ、




なんて、






言っていたっけ……。
















「ナナシッ!!!」




ドゴッ!




「余所見をするなと何度言ったら分かる!!作業に戻れ!!」



バキィ……!




3代目の代わりに俺の親代わりとなってくれた上忍はDVの常習犯だった。
上や外ではいい顔をして家に帰ってきたら『丁度いい暇潰しが出来た』と言って俺を殴り潰す。
時には卑猥なことだってやらされる。

それが今だ。



「ん、……んん、んっ、」

「ちゃんと銜えろ、終わらねぇと寝れねぇぞ」



俺に配慮して建てられた家は里の少し離れた所にあって此奴がいくら怒鳴ったって周りに聞こえやしない。





暫くして口の中に出されたそれを親代わりがいなくなった途端に吐き出した。

嗚呼、苦しい・・・ここは息苦しい


「……」


俺は立ち上がって玄関のドアを開けた。
少し、……外の空気を吸いたかった。




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