短編 壱

□鷹の目右腕主
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お届けものです






「……どうしましょ」


家主の居ない不気味な館。
まだシーツにぬくもりが残っているから家主が出たのはついさっき。


「間に合いますかね…」


小さな箱を手にした青年はそう呟いてから窓の枠に手を置いてふわりとその身を館の外へ。




「忘れ物なんてうっかりさんです、ミホークは」




王下七武海と海軍上層部の会議に出掛けた相棒を追う青年は何処か楽しそうに森を駆けて行った。







────────────────…





「どうにかミホークに逢えませんか?逢えなくてもいいですからこれミホークに届けて下さい」




白い小さな箱を海軍の受付に持ってきたのは先程の青年。移動手段は分からないが特別疲れた様子も無いので安全な航路だったのだろう。

しかしそんな青年に対して受付の海兵は困り顔だった。
まず、王下七武海の『鷹の目』を呼び捨てで呼び、今日の会議で使うはずの『秘密』を持っている時点でもう色々と突っ込みたい。
それに青年はどこにでも居るような、言ってしまえば無害そうな顔立ち。

そんな一般市民が何故これを…








「何をしている、ナナシ」

「あぁ、ミホーク。忘れ物ですよ、僕慌てて追いかけてきたんですから」



本 人 登 場 。


これには困り顔だった海兵も唖然。
まだ会議中な筈で。しかも青年の名前らしいそれを呼んで。青年もまるで恋人かとでも言うように寄り添っていって。



「余計なことをするな」

「道中困る事もありませんでしたし大丈夫ですよ」

「……全く」




あの鷹の目が折れた……?
これには受付だけではなく周りにいた海兵達も唖然だ。
青年は『はい』と箱を渡すと



「帰りは一緒に、ですよ。本部に来る途中に面白そうなお店がありましたから見てきます。ちゃんと会議出ないとダメですよぉ」




そう言って受付の海兵とその周りに軽く頭を下げて行ってしまった。
置いていかれる形となった鷹の目は少しだけ目を閉じてから箱を懐に仕舞って、



「全く、困った右腕だ」



そう言って歩いていってしまった。


あれが噂の『右腕』か、と。
海兵達の話は海軍上層部や王下七武海、そして海を騒がす海賊達にも伝わるハメになるとは。
この時誰も想像していなかった。







End
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