短編 壱
□鷹の目右腕主
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右腕らしいです……?
鷹の目に『右腕』がいるらしい。
それはこの偉大なる航路だけでなく東の海や他の海でも有名な話だった。
しかし、その姿は誰も見た事がなく、幻の存在と化している。
「らしいですよぉ、僕」
「そうらしいな」
薄暗い館の一室。
風呂上がりらしい半裸の男の横で寛いでいるのは一見女にしか見えない風貌の青年。
「僕って貴方の右腕なんです?」
「あぁ」
「ミホークが言うならそうなんですね」
半裸の男をミホークと呼び捨てする青年は傍らに置いてあるミホークの剣を撫でる。
「今度はシャボンディ諸島にでも行きたいですぅ、海沿いのあのお店のクッキーが美味でした」
「今度な」
「はぁい」
王下七武海の仕事や修行もあるんだろう、彼はきっと青年が忘れた頃に連れていってくれるだろう。いつもそうだ。
「ふぁあ、そろそろおやすみですミホーク」
「あぁ、明日な」
「はぁい。……あ、明日はワノ国のご飯がいいですっ」
「分かった」
「えへへ」
青年は満足そうに微笑むと部屋を出ていった。
鷹の目───ミホークは青年が出ていった方を見遣ると
「お前が俺の元から飛び立たないと言うのなら他に見せてやってもいいんだがな」
その呟きは誰にも聞かれずに静かな部屋に染み込んで消えた。
End