短編 壱
□薬売り主
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約束、守る
ボクがその里に帰ってきたのは丁度秋。
ボクの薬が必要な人が沢山いるらしい。
「薬売りのナナシです。火影様より帰還の命を受け帰ってきました」
受付でそう言えば待っていましたと周りが湧いた。どうやらボクの薬はボクが居ないところでも随分役に立っていたらしい。
☆
「ナナシ、分かっていると思うが此処ではお前しか頼りにできない。先の戦争で大半を失ったからな」
「分かりました。ボクにできる事は何でもします」
火影様はそれだけ言って別の患者を治療しに行った。
木ノ葉病院に溢れる呻き声と泣き声。
ぐわりと足元が揺れる。
馬鹿、しっかり立て。
ここにはボクの薬を必要としている人が沢山いるんだ。
「ちょっっっぴり苦いですがごくんと一飲みでお願いします」
「甘いと思えば甘くなるのです!飲まないと治りません、さぁごくんっ!」
「沁みますねぇ、でもこの沁みは未来の貴方が動ける為の第一歩です」
「ゆっくり飲み干してください。一気に飲むと気管に障ります。無理は禁物ですよ」
それがほぼ全て終わったのは2日後。
ほぼ全ての患者の容態は安定期に入った。
ボクは、と言えば。
「ボクは何故君の家に居るのでしょう、シカマルくん」
目の前には随分と大人になった奈良シカマルくんの姿。どうやらもう上忍らしく任務も難しいものになっているのだとか。
シカマルくんと出会ったのは彼がまだアカデミーの頃。ボクが両親の真似事で薬を作っていた時に怪我をした状態でいたのが始まり。
僕のとてつもなく沁みる薬に声一つあげないで有難うと言ってくれた彼はボクが他の里に呼ばれ、木ノ葉を離れる時もまた逢おうと言ってくれた。
「この2日寝てねぇんだろ。今日は俺1人だし気にせず寝ればいい」
「しかし……」
「いいから。火影の許可は取ってる」
「シカマルくん」
「あ?」
「有難う」
「……おう」
こんな事言ってはきっと誰かに怒られてしまうんだろうけどシカマルくんが死ななくて良かった。
また逢おうって約束、破ってしまわなくて本当に
『良かった』
End