短編 壱
□いじめられっ子主
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少しの痛み
「ナナシー!これ倉庫に運ぶぞー!」
「ナナシ!それ終わったらメシ喰うぞ!」
「馬鹿っ、お前洗濯終わってねぇだろっ」
怪我が治りかけてやっと自分の足で歩けるようになった。
俺はどうやら乗船2ヶ月目にしてやっと顔と名前を覚えてもらったらしい。しかもそれが十六番隊の隊員ばかりなのだから嬉しい事だ。
「うん、今行く」
早く仕事を終わらせて食堂に行ってサッチ隊長のご飯を食べよう。
俺がベッドの住人だったとき、彼だって忙しいのに毎日3食、食べられる量を作ってくれて。これがすきだ、あれが苦手と言えば分かったと一つ頷いて痛みを伴う治療を受けた日の夜は俺の好きなものが出るようになった。
そしてオヤジと初めてまともに会話した。
オヤジは俺を抱きしめてから『周りを頼れアホンダラ』と優しく、いつも見るような拳骨なんて無くて泣きそうになるくらい優しくそう言ったのだ。
「よぉ、ナナシ!今日はどこ担当だ?」
最近の悩み、と言うほど大きなものではないけれど、
「おはようございます、エース隊長。
えーと、積荷の運搬ですね」
「そんなひょろっこい身体で折れねぇか?」
「そこまで細くないです」
エース隊長や他の隊長格の方が俺に話しかけてくること。明らかに俺だけを標的にしている気がする。
「エース、仕事の邪魔だろい。絡むない」
「んだよ、マルコ。少しくらい良いだろッ」
「お前倉庫の掃除終わったんだろうねい?」
「あッ……、やべ!」
スタコラサッサと走っていったエース隊長を呆れた様子で見送ったマルコ隊長は「悪かったねい」と俺の頭をポンポンと撫でて去っていった。
……。
そろそろ貴方達が所属してる隊の隊員に闇討ちとかされないだろうかと胃が痛いんですが。
End