短編 壱

□いじめられっ子主
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慣れてしまった痛み



俺はかの白ひげ海賊団の下っ端クルーだ。
毎日雑用で大変だけどサッチ隊長の作るご飯は美味しいし、俺が所属する隊のイゾウ隊長は男なのにとても美しい。俺なんてまだ名前すら覚えてもらえてない新参な訳だけど。
新しく二番隊の隊長になったエース隊長も格好良くて憧れだ。

俺はきっと意地でもここを嫌いにはなれない。




ドゴ、バキッ、



小さな倉庫に響く何かを殴りつける音。
新人の俺は躾と称して他の兄弟から暴力を受けていた。
痛くて堪らないけどこれが新人の誰もが通る道なのだと疑わなかった。もう、慣れてしまっていた。


この船に乗ってもう2ヶ月だけど相変わらず“躾”は続く。

海戦の時だって凄く痛むし、船医に診せるもんじゃないと何度も言われて居たからか海戦の後は大部屋に籠るようになった。
だからいつまで経ってもイゾウ隊長に名前も顔も覚えて貰えない。



ガツッ!


血だらけの顔に足が押し付けられて腹には別の兄弟の足が乗っている。今日はなんだか苛々しているみたいで一撃一撃が重かった。

だからだろうか。

今日はちょっとだけ何かが違ってたみたいだ。





「おい、お前ら何やってる」



その部屋に響いたのは四番隊隊長の声。
そろりと其方を見れば怪訝そうな顔をして立っている。

そうしてサッチ隊長と目が合うとサッチ隊長は海戦の時と同じ怖い顔をした。
オヤジを笑い者にした馬鹿な海賊を殺す時みたいに怖い顔。



「もう一度言う。


お前ら、そこで何やってる」




小窓から入る月の光が俺を照らした。
誰かの息を呑む声が聞こえた。

その後の事はよく覚えてない。
倉庫内にサッチ隊長の怒声が響いてその声に気付いた何人かが入ってきたの迄は覚えている。


随分血を流しすぎた俺はそのまま気を失ってしまった。


End
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