短編 壱
□暗部主
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寄り添う熱
任務中、雨に降られた。
小さな洞窟を見つけて俺の火遁で火をつけたまではいいが。
「くしゅんっ」
「大丈夫ですか、ナナシ先輩」
自分の熱が上がっていくのが分かるのは隣の後輩の体温が低いからだ。
「……大丈夫。任務に支障は、ごほ、出さない」
「…………」
分かっている。
俺だって風邪気味の奴がいたら自己管理が足りないやら何やらで叱るだろう。そいつ等は任務に支障が出ない程度で動く。
だがこの任務、俺とカカシ君しか居ないのだ。
どうにかしてこの熱を治めなければカカシ君だって俺を見放すに違いない
────☆────☆────
「ん、……ぅ、」
いつの間にか眠っていたらしく雨も上がって綺麗な夕日が見える。
カカシ君の肩にもたれ掛かって居たようだ。
「起きました?」
「悪い、寝てた…」
「どうせ任務は終わってるんでいつ帰ってきてもいいそうですよ。嗚呼、それと火影様から伝言で
『お前に一週間の休みを与える』
だそうです」
「……そっか」
火影様からの言葉もどうでもよくなるくらいには頭が煮えてるらしい。
起き上がらせた頭をもう一度カカシ君の肩に遣ると、カカシ君は「他の後輩の分までやってたんですってね」と頭を優しく撫でてくれた。
「…皆上忍師やらで忙しいじゃないか。
君達は子供を守って育てるって大変な仕事を任されてんだから俺だって何かしたいじゃないか」
普段心の奥に仕舞っている筈の本音がどんどん出てくる。これは色んな意味でマズい。なのに口は止まらないしカカシ君の手も止まってくれない。
「皆が離れていくのが嫌なんだ。
暗部で一緒に戦ってた時代とは違う。俺は影でお前は光となって生きていく。いつかお前達が俺を忘れる日が来るんじゃないかってとてつもなく怖い」
不意に体の向きが変わったと思えばぎゅ、とカカシ君に抱き締められていた。
「だから少しでも接点を持ちたくて。この仕事誰がやってくれた?ってナナシ先輩だよってそんな会話でいい。俺がお前達から忘れられてないならそれで――」
「ナナシ先輩……?」
――それで構わない。
End