海賊 2
□参:赤髪との邂逅
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「……『名無しのお尋ね者』か」
そう呟かれた声と同時に身体を刺すそれが増した。リトは臆せず足を動かした。
覇気にやられていないクルー達が見守る中、リトはゆっくりと赤髪の方へ足を進めていく。
そうして少しの距離を置いて立ち止まった。2人は睨み合う。誰かの息を呑む音が聞こえた。
「……」
「……」
「……ふっ」
「……………、」
赤髪が吹き出し、リトがその口角を上げた。その瞬間に緊張感は和らいで赤髪が笑い出す。
「だーはっはっはっ! お前すげぇな! 俺はシャンクス! お前は?」
「……リト」
「リトか! いい名前だな! まぁ何だ、仲良くしようぜ!」
バシバシとシャンクスに背中を叩かれているリトは既に彼に興味が無い様だ。
これまたゆっくりとシャンクスから離れて白ひげの横に置いてある車椅子に座った。シャンクスはその行動にも笑いを起こして本題である酒を白ひげに渡す為また歩みを進めた。
――――。
「まさか名無しのお尋ね者、いやリトがいるとはな」
「命の恩人だ、馬鹿な海軍に取られちゃあ勿体ねェ」
船長同士の会話は妙に緊張感があるが、その周りはそれを気にしない宴の嵐だ。
リトは白ひげクルーに勧められた料理を口に運んでいたが、普段居眠りをしているエースがやけに世話を焼いていた。
近くで見ていた一番隊長曰く、リトが船に乗った時から気にしてはいたのだが話し掛けるタイミングが掴めずに今に至るのだとか。
「リトっ! これも美味ェぞ!」
「あぁ」
シロが近くに居ないので短くだが喋ってくれるリトにエースのテンションは上がっていく。酒も料理も今日は一段と美味く感じるのだ。
程々にしとけよ、なんていう仲間の声は話半分に聞き流す事にしたエースだった。