海賊 2

□参:赤髪との邂逅
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車椅子でウトウトと眠り込んでしまったリトを抱え込んだのは白ひげだった。


『まだやらなくてはいけない事がある』


そう言ったリトの表情は変わらなかったが目に強い光があった。まるでかの海賊王の様な鋭く未来を見据える目。

面白いと思ったのだ。
自身の身が病に侵されて居なければ「ついて行きたい」と思わせるほどには。



《私はそれに憑かれた身だよ》


白ひげの心情を見透かしたように言ったのはシロだった。


《私には寄ってくる雑魚は居ても傍に居てくれる仲間は居なかった。私はその小僧に惚れた。その眼に、その覚悟に、その強さに。

私は憑かれたんだよ、リトに。
お前は止めておけ。お前には傍に居てくれる仲間がこんなに居るだろう》


そう言ってシロはまた酒を呷る。
まるで依存のように。傍から見れば滑稽な喜劇に見えるだろう。
憑かれる、とは。

白ひげはすやすやと眠るリトを見遣ってからそれに依存する白狐を嗤った。
そして既に海賊という地位に憑かれた自分を。









────*────*────





ざわり、と空気が揺れた。
緩やかに流れていたそれがぴしりと固まる。

空気の変化にリトは目を開けた。自分を抱く白ひげに驚きはしたものの、直ぐに周りを見渡した。





「………」

そして船の入口を見つめると白ひげの腕から飛び降りる。
折れた方の足を庇いながらそちらを見遣ると唐突にリトの目の前に居たクルー達が目を見開いて倒れ始めた。

それは留まる事を知らずにバタバタと周りが倒れていく。ビリビリと自分の身体に何かが刺す。

これは……、


《覇気か》


リトは自分の“読んだ”知識を思い出す。そうか、と思い出したと同時に見覚えのある赤い髪が見えた。
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