海賊 2

□参:赤髪との邂逅
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〈チェックメイト〉

「ああー! 何でだよー! リト、強いなぁ!」



ガヤガヤと煩い甲板。
リトは車椅子に乗りながらクルーとチェスをしていた。
普通ならば1週間はベッドの住民にならなければならないのだが、リトはその翌日に起き上がり船医の肩を少し借りただけで車椅子に乗ってしまったのだ。


《……楽しそうだ》


白ひげの隣で酒を呷ったシロはそれをニヤリと見詰める。

そうしていると駒を集めるクルーから目を離したリトと酒を呷った白ひげの目線がかち合った。
その瞬間、モビーの空気が止まった気がした。

しかしそれも本当に一瞬ですぐにいつもの馬鹿騒ぎが戻ってきた。
リトは車椅子を動かして白ひげの前に移動する。
まだざわざわと遠くの方は騒がしいものの白ひげの近くはシン、と静まり返っていた。


「リトって言ったな、何故うちの息子を助けた」


低く唸るような、しかし決して相手を言い負かそうとはしない様にリトはシロを見た。


《私に言った通りでいい。自分の声で伝えろ》


リトは一度目を伏せ、そして目をあげた時にはもう船上には音一つ無かった。







「俺は俺のしたいようにした。感謝される謂れはない」





ハッキリした声だった。
穏やかで静かな声だった。下っ端のクルー達がその声に少し威圧される中、白ひげはグララララ、と楽しそうに笑った。



「面白れェ奴だ。おいリト、お前俺の息子にならねぇか?」



その問いに自分に問われた訳でもないのにマルコは少し前のめりになった。馴染みのリーゼントにそれを気付かれて笑われてしまった。


「ならない」


リトの答えは否定的だった。


「どうして」


「まだ、やらなくてはならない事があるから」


しっかりと意志の込もった目に白ひげはまたグララララ、としかし今度は静かに笑った。
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