海賊 2
□弐:白ひげ海賊団
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マルコは戦慄した。
かの白ひげ海賊団一番隊隊長に属するマルコは怖いものなど無いと思っていた。海王類も海賊も海軍も時たま遭遇する山賊も。それなりに戦っては来た。それでも怖いと思った事など幼少期以来である。
自分の意思を無視して震える身体にそうだよな、怖いよなと他人事の様に同情して目の前の光景を見た。
マルコより小柄な青年が大鎌を振り上げて今しがたマルコを襲おうとしていた青年の倍もありそうな象を吹っ飛ばしたのだ。
そのたった一撃で動かなくなった象を一瞥してからこちらに向き直った青年に息を呑んだ。
マルコの《弟》を窮地から救い、情報が無い為に前代未聞の【名無しのお尋ね者】となった青年の目は冷たい氷を思わせるような白の混じった薄い青色だったのだ。
手配書には薄すぎて写らなかったのだろう。
一瞬、目の色が白なんじゃないかと疑うほどに薄いその色にマルコは暫し見蕩れてしまった。
あの象を一撃で倒し、しかも青年は息切れすらしていない。マルコだって海王類を蹴り飛ばす事はある。
しかしそれでも目の前の青年はマルコより小さ過ぎる。覇気を使った様子もない。
もし彼が『敵』だとしたら、ああ、考えたくもない妄想である。
*
シロは移動しようとカンテラと大鎌を折り畳み、鞄に入れたリトに管狐になって首に巻き付く。
特に会話もないが後ろからマルコが着いてくる。
撒く気はないようだし、このまま街にでも戻るのだろう。
象を瞬殺したリトにマルコが何やら聞きたそうな顔をしているが質問したって滅多に喋ることのないリトから有力な情報が掴めるとは限らない。
シロはふぅ、とため息を吐くとやはり爪の甘過ぎる相棒の首を少しばかり絞めてやるのだった。