海賊 2

□壱:名無しのお尋ね者
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それからも大金に目が眩み、命を狙ってきた海賊達から逃げ仰せて少し疲れたと仰ぎ見た先には見覚えのある海賊旗。

ここは…“白ひげのナワバリ”だ。





彼のナワバリにどうして海賊達が居るのか気になるところだがそんな暇もない。
どうやら住民達は白ひげの“息子”を救った名も知らぬリトを歓迎しているらしい。
海賊に追われるリトを匿ったり水を分けてくれたりするのだ。

やり返したらいいのに、と笑う貴婦人に首を振るリトに『自分達に被害が出ぬようにしてくれている』と好感度が上がったのは彼の知らぬところである。

それでも諦めの悪い海賊にリトは良くしてくれた住民達に頭を下げると鬱蒼と生い茂る深い森へと入っていった。
地元の住民でも滅多に入らぬそこは危険が多く潜む未開拓の森であった。

住民達は市長の元に集い、白ひげに連絡を取るように促した。【火拳のエース】を助け、自分達を気遣ったあの青年が死ぬのは耐えられぬらしいのだ。












その頃リトは後ろを走る海賊達に気を取られ落ちた崖の下にいた。ズキズキと痛む身体を叱咤して見上げた先にはもう彼らの姿はなく、ようやく諦めてくれたのかと息を吐いた。



《何をしている、おちおち寝てもいられんわ》



そんな声がしてそちらを見ると大きな白い狐がこちらを見て呆れた声を寄越した。

無人島で出逢った彼はどうやら管狐の一種らしい。尾が9本あるシロは何千年も生きてきたらしく狐に変化できる、他の管狐にしてみれば憧れの対象らしい。


管狐の姿の時はなんとも可愛らしく『きゅーきゅー』と鳴くだけなのに喋るとなると何とも高飛車なやつだ。
立ち上がろうとしたリトは激痛を感じて再びその硬い地面に尻をついた


《……お前、右足が折れているぞ。無茶に動くな、自分の手に冷気を集めて冷やしておけ。私は何か食べるものでも取ってこよう》




しかし、長い間相棒として持ちつ持たれつの関係を築いて来たからかやはり憎めないやつでもあった。
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