海賊 2

□壱:名無しのお尋ね者
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青年を囲むのは感じの悪い海賊達。
人気のない通路でもなく、人通りのある賑やかな市場で絡まれた彼の名は数ヶ月前に【火拳のエース】を窮地から救ったお尋ね者のリトだった。





しかしずっと無人島で暮らしてきた彼の情報は何処にもなく、例を見ない【名無しのお尋ね者】となっていた。
フードを被っていたが赤犬との闘いで風が吹き、顔を隠すフードが脱げてしまったのだ。すぐに被り直したが何処で誰が撮ったのかその顔写真は世界中に広まってしまった。


お尋ね者になるのは覚悟していたリトだったが出来れば顔を見られずにやり過ごしたかったと、自分の爪の甘さに舌打ちをしたのは記憶に新しい。
相棒の管狐───シロにも散々怒られて今も鞄からは出てきてはくれない。

こんな人の多い所で暴れれば周りの人間に被害が及ぶ。リトはニタニタと笑う海賊達から顔を隠すようにフードを被り直すと姿勢を低くした。
戦闘態勢か、と緊張の走った海賊達と住民達を他所に方向を変え地面を蹴った。









『えぇえええーーーー!!?? 逃げたぁあああ!?』










その行為に驚いた彼等が見た先にはもうお尋ね者の姿はなかった。
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