短編V

□りんご
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赤い果実、甘い果実。
貴方の笑みは林檎の様に鮮やかで甘くて綺麗で。とても僕なんかが傍にいてはならないような…、

言ってしまえば芸術。

そのまま美術館に飾ってしまっても何も問題がないような、寧ろ何故飾られないのか不思議な、触れるのすら厭う程の人だった。

「嗚呼、間違えた」

凛と通る声が僕の耳に入る。
どうしたんですか、と口に出す事なく其方を見遣れば貴方は雑誌や書類をバサバサと床に落として嘆く。

「この前のフジイさんの件、数字間違えちった」

てへ、なんて舌を出してお茶目に言った貴方はやる気失くした、と椅子に座った。

「じゃあ、休憩します?」

控えめに、その耳に届いてなくてもいいなんて誰にも分からない謙遜をしながら言った言葉に貴方はやった、と笑う。

嗚呼、その笑みだ。
その笑顔だ。

林檎の様に鮮やかで甘くて綺麗で…


そしてとても






美味しそうな、その笑みだ。

僕は、その笑顔が大好きなんだ



End
 

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