短編V
□理由はないけど
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「先輩」
「あ? どった?」
寒柳 柊先輩の肩にもたれ掛かり、僕はアイスを齧る。
季節は夏真っ只中。
外も部屋も暑くてエアコン無しでは生活できない。そんな中でこんなにくっついても暑いと言わない先輩は神様じゃないだろうか。
「明後日水族館行きましょーか」
「お、いいねぇ」
テレビも付けてない先輩の部屋には外からの蝉の鳴き声が嫌でも聞こえて俺はぐでーんと更にもたれ掛かる。
そうしてアイスを咥えてカバンを探ってから目的のものを先輩に渡した。
「実はチケットは取ってあるんですよー」
「俺の彼氏、優秀かよ」
「でしょー? もっと褒めてくれていいんですよー?」
俺の手からチケットを取って先輩は喜んだ。
この人エッチの時はタチだけど可愛い。そこら辺の女なんか目じゃないぞ。
「じゃあ明後日はデートだな」
「わーい、チケット取ったんでお昼は先輩奢って下さいねー」
「おう! あったり前だろ」
そうしてミーンミーンという蝉の鳴き声がピタリと止んだと同時に先輩が不思議そうにして
「でも何で急に水族館?」
「んー、特に理由は無いですけど・・涼しそうだから?」
そう言って俺はアイスを食べ終えた。
End