お題小説
□恋する動詞111題
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【焦がれる】×押し殺そう、この想い
恋人との時間がなくてモヤモヤするお話
テスト期間というのは先生の時間も俺の時間も取ってしまうものだ。テスト範囲は分かっているし、ワークだって既に終わっているが何分先生の時間が取れない。
教科担当の先生だし忙しいのは分かる。
あんなナリだが普段は真面目な人だし、ちょっとナンパな所はあるけど俺達二年の数学任されてるし。
分かっては、いるんだけどな……。
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
「さぁ、お前らー! テスト終わったけど気ィ抜くなよ〜」
そんな担任の言葉にグデーンと脱力する生徒達。俺はガタ、と音を立てて立ち上がった。
「んぉ? 尋木、どこ行くの?」
「数学の最後の問題分からなかったから先生に聞いてくる」
「おー……、流石優等生ぇ〜」
そんな友達に手を振って教室を出る。
俺は周りに人が居ないのを確認してから早足で資料室へ向かった。
ガラリとドアを開ければ奥の机で採点をする先生の姿。俺の姿を認めると答案用紙を端に寄せて立ち上がった。
「テスト、どうだった?」
「先生らしい意地悪な問題ばっかりだった」
「お、採点が楽しみだ」
そう笑った先生はカツカツと近付いて俺を抱き締めてくれた。俺越しに資料室のドアの鍵を閉めれば廊下の喧騒は少し静まった。
「……嗚呼、久々の彩水だ……」
「せ、先生、苦しい……」
「彩水だ……」
「先生、聞いてる?」
ぎゅうぎゅう抱きしめてくれる先生だが、テスト後の休み時間は短いから俺は先生から離れて彼の額にキスをした。
「悪いけど先生。俺顔見に来ただけだから」
「…………」
「拗ねないで。今日は先生の家泊まりに行くから、ね? じゃあまた放課後ね」
溜息を吐いた木坂先生は観念したように手を振って鍵を開けてくれた。
テスト終わりは焦がれる想いが溢れて先生が抱き着いてくれるのでちょっぴり嬉しいんだよね。
【焦がれる】
End