お題小説
□真冬の恋7題
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【この熱は消えぬまま】×缶コーヒー
仮眠室で寝る恋人に寄り添う話
キィ、と少し油の足りない音を立てたドアは開いたと思えばすぐ閉じた。そこに入ってきたのは璃原 恋暖。入社4年目のわんこ社員。
平凡ななりだが仕事は出来、イケメンの恋人もいる。所謂勝ち組というやつである。
「……やっぱりここか」
そんな彼が腰を下ろしたベッドには恋人の真宮 犬夜が眠っていた。犬夜の部署は一昨日から随分と忙しそうにしていて今朝、やっと一段落ついたのだと女子社員が零していた。
少し暖房の効いた部屋で気持ちよさそうに眠る恋人に近づく。
「お疲れ様です、先輩」
「ん、」
「あっやば、」
軽く額にキス、を落とす前に犬夜の目が開いた。慌てて身体を起こしたが、犬夜は「なにやってんだ」と掠れた声で咎めた。
「先輩のトコ、忙しそうだったんで差し入れでもって思ったんすけど…先輩寝てるって聞いたから」
「おまえんとこは」
「俺んトコはいつも通り、会議して資料まとめて、外回り行って解散ですよ」
「……っそ、」
伸びをした犬夜に恋暖はポケットに入れていた彼の好きな缶コーヒーを取り出す。
「飲みます?」
「のむ、」
「あ、結構前に買ったんでぬるいですよ」
「ん、」
しかし恋暖が開けた缶コーヒーを受け取らない犬夜。その意図を汲み取った恋暖はコーヒーを口へ含む。
「ん、……んん、ふっ」
「は、……満足ですか?」
「……ふっ、あっつい……」
「っ……」
口移しで飲ませたあと眠そうにそう言った犬夜に恋暖は口元を覆いながらぼそりと呟いた。
「襲いますよっ……!」
理性ギリギリにそう言った恋暖の言葉を意味深に笑い飛ばした犬夜に敵わないと少し悔しくなった。
【この熱は消えぬまま】
End