お題小説
□闘病中な彼のセリフ
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【こんな弱気、俺らしくないね】×パシリじゃないよ?
風邪を引いて心細くなるお話
「ん……っつ、」
べったりと張り付く汗。
くらくらと歪む視界。
季節の変わり目、俺は見事に風邪を引いた。
左佑には連絡した。一応恋人同士な訳で若干パシリとして扱われる事もあるけど…。
電話口では特に何も言われなかった。
………………べっつに寂しいとか思ってませんけど!?
付き合えって言われて一方的に付き合って結局お互い本気になって四六時中離れずにいる訳だけど…いざ、離れてしまっては何だか気持ち的なものが冷めるんじゃないかって少し怖い。
「…少しくらい心配しろ、バカ左佑」
「誰がバカだって?」
「……っ!?」
俺しか居ないはずの部屋に響いた居るはずのない奴の声。歪む視界の中でそろりと扉の方に目を動かせば少し不機嫌な顔をした左佑様が居たではありませんか、いや嘘でしょ
「いつからそこに」
「ついさっき」
「鍵は」
「お前が使えって俺に渡したんだろうが」
そうでしたね。
副リーダーさんに恋人っぽいことしてないのかしら? なんて付き合いたての頃に煽られて自分の家の合鍵を投げつけましたよ、えぇ、今思い出しましたとも。
律儀にもそれを持っててくれていたらしい左佑は鍵と何かが入った袋をテーブルに無造作に置くと近寄ってくる。
「心配だったから来たんだろうが、アホ恭平」
「アホは余計」
「季節の変わり目に風邪引くのは大抵アホだ」
「……るさいっ」
ぺちん、といつもならそんな事すればすーぐ不機嫌になってしまう左佑も今回は俺の好きにさせているみたいだ。弱音を聞かれてしまったのが効いたみたいである。複雑だな…。
「薬は」
「飲んだ、寝るだけ」
「他にいるもんは」
「ん、」
「あ?」
怖いわ、凄むな。
眉を寄せた左佑の袖を握る。
「左佑が、いい」
「…………お前風邪治ったら覚えとけよ」
「今日だけ、だから」
なんて軽口を叩いて俺は目を閉じた。
眠っている間に汗を拭いて着替えさせてくれたらしい左佑は目が覚めたらもう居なかったけどテーブルに置かれた袋には梨のゼリーが入っていたのだった。
【こんな弱気、俺らしくないね】
End