お題小説
□日常シーン10題
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【壊れた街灯】×sweet lover
夜に少しだけ会うお話
冷えて少し動かしづらくなった指先にハァと息を吹きかける。俺はチカチカと壊れかけた街灯の下で永嵜さんを待っていた。
付き合い始めてまだ1ヶ月だけど、世界が色を付けたみたいに変わっていくから面白い。
なんてことの無い日常にあの人が加わっただけなのに。いや、だからか。
俺が考え事をしながらもう一度ハァと息を吹きかけた時だった。
「マフラーもしないで、寒かったでしょ」
「ぅわ、永嵜さん・・・」
後ろから抱き着いてきたのは永嵜さんだった。心臓に悪いから普通に声を掛けて欲しい。夜だし、街灯は心許ないし。
「びっくりした・・・」
「びっくりさせたの。所で勉強は大丈夫? 結構無理言って出てきたんじゃない?」
「大丈夫、じゃなきゃこんな所来ねぇ……ですよ」
「ふふ、そっか」
永嵜さんは納得していないみたいだけど笑ってくれた。こういう、急に大人な一面を出してくるのは・・・その、ちょっとずるい。
敬語は要らないとか対等で居たいとかは付き合う前から言われてたけどやっぱり何となく差は感じちまうし、敬語もまだ少しだけ取れていない。
ピトッ
「ひぅ……!?」
「まーた、考え事?」
首元に冷たい何か。
どうやら永嵜さんが手袋をわざわざ外して俺の首に手を当てたらしい。
「難しい事考えられるのは津一の凄い所だけど今はこっち、ね?」
「ぁ、名前・・・」
「ふふ、恋人でしょ」
得意気に笑った永嵜……いや、那古さんはちょっと子供みたいだ。
チカチカと壊れかけた街灯はやがて明かりを灯さなくなった。けど、その方がいい。
俺と那古さんのキスを見えなくしてくれたから。
【壊れた街灯】
End