お題小説
□日常シーン10題
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【風の強い日】×缶コーヒー
犬夜が一緒に帰ろうと誘うお話
ガタガタと風で鳴る窓。
悲しくもその音が響くオフィスには俺1人だった。
殆どの者は仕事を終えて帰宅しているし俺ももうすぐ終わるんだが。
「この風じゃなぁ…」
帰るのが億劫とはこの事だ。
電車も遅延していると部下が言っていたし、どうにか風が止んでから帰りたいがそれまでオフィスに居るのも寂しいものだ。
「あ、そういえば」
恋人である恋暖は車で来てたはず。
それにアイツの部署はまだ終わってない。
『一緒に帰らないか?』
そんなメールを送ってすぐに返信が来た。
最近の若いのは文字打つのが早いなぁ。
『いいですよ! 今会議中なんで、会議終わって資料片付けたらそっち行きますね!』
おい、会議中に携帯弄るな。
数十分後───
「先輩っ、お待たせしてしまってすいませんっ! 帰りましょー!」
珈琲を飲みながらウトウトしていると恋暖の元気な声が聞こえた。
「ああ…」
「でも急にどうしたんですか。一緒に帰ろうなんて」
「風強いから何か帰るの面倒でさ」
「あー、なるほど。
それで俺を頼ってくれたんですね!」
目をキラキラさせて言うがそんな頼られ方でもいいのか、ワンコめ。
「なら早く車行きましょう!」
まぁこいつが嬉しそうなら何でもいいか。
俺は鞄を持って恋暖の後に続いたのだった。
【風の強い日】
End