お題小説
□無防備なきみに恋をする5題
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【狼まであと何秒?】×罠に嵌った蝶
ふとした仕草にグッとくるお話
「トモ、これ……って、」
帳簿を持って店の事務室へ入れば真剣な表情のトモがそこに居た。
俺の嫁として巷じゃあ有名だ。
いつもふんわりとした笑みを浮かべて鬼嫁だと思っていた客を骨抜きにしているのをよく見掛ける。まぁ、そんな事してても本人は無自覚な訳で他の連中も俺のもんに手を出そうとは考えてねぇだろうから気にしてはないが。
「あ、慎史さん」
「トモ、これの件なんだがな」
「はい。……えーっと……」
眉を揉みこみながら帳簿を見遣るトモ。
疲れてるな…最近客も増えたからなあ。
「トモ」
「はい」
「店、休むか」
「はい?」
「そんで旅行に行く。今決めた」
「いや、突然何の話ですか?」
戸惑うトモの顔が愛おしく見える。
こりゃあ末期だな。
「折角お客様も増えてきたんですから尚更今の時期は休めませんよ」
「大丈夫だから」
「……はぁ」
言い出したら聞かないと知っているからかトモはため息を吐いてから髪を耳にかける。
あ、今の好きだな。
「あとトモ」
「はあい?」
「今日は早めに帰るぞ」
「……? はい」
二人きりの時でよかった。
待てよ、これ客の前でもしてたな。
………………。
前言撤回。
今日は気にする、超気にする。
気にした上で嫉妬する事にする。
「あと今日襲う」
「いや、慎史さん? 意味がよく…」
「無自覚無防備な恋人を持つと大変ってこった」
「????」
【狼まであと何秒?】
End