お題小説
□無防備なきみに恋をする5題
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【きみの心に触れさせて】×何も言わないでも
誕生日にお見舞するお話
「浩哉、おはよ」
「………………」
いつも通り。
会話の無い空間で亮河はあるものを取り出す。
「本当はケーキあげたかったんだけどセンセーに止められちってさ」
ハートや星の形にくり抜かれたクッキーだった。可愛らしくラッピングされたそれには『お誕生日おめでとう、ヒロくん』と丸っこい字で書かれていた。
「あ、分かっちゃう? これ妹が作ったんだよ。誕生日だって今までと変わんねぇしさ」
「………………」
「お前の誕生日って教えたら変に気合い入れてたわ。……あ、彼氏はもう居ねぇみたいだけどな」
小声でそんな風に教える亮河は少し悪い顔をして笑った。そうしてラッピングを解けば星の形のクッキーを取り出した。
「んー、味見とかさせてくんなかったし…毒味〜」
カリッと口に含んだクッキーは程よい甘さで溶けていく。あ、美味っと呟いた亮河は妹の気合いを少し馬鹿にしていたようだ。
こん、
バリボリとクッキーを食べていればベッドの金具部分に浩哉の手が当たっていた。
それだけで亮河は察する。
「ん〜? 浩哉も欲しい〜? 超美味いよ、いやぁ、正直嘗めてたわ」
とハートの形をしたクッキーを一口サイズに砕いて浩哉の口へ入れる亮河。
もごもごと口を動かす浩哉に亮河は笑っていつも通り話し始める。
「あ、彼氏に振られちまった話でもする? ってか浮気されてたらしいわ、どんまいって感じだよな〜」
今日も、一日が過ぎていく。
【きみの心に触れさせて】
End