お題小説
□電話越しに彼のセリフ
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【声、聞きたいと思って】×愛しの我がキャット
真夜中に電話するお話
現在夜の2時。そう、深夜の2時。
ちょっと昔の夢を見た俺は恋人の声が聞きたくて柚李に電話を掛けていた。
今が真夜中だとか。
多分出たとしても機嫌悪そうとか。
そんなの抜きにして取り敢えず一言でもいいから声が、
『なに、こーすけ』
「…………寝てた?」
『あたりまえでしょ、いまなんじだとおもってんの』
寝起きだからか少し掠れて舌っ足らずな言葉に俺の頬は自然と緩んだ。
「特に用って訳じゃねぇんだけど…」
『おー』
「声、聞きたいなぁって」
『………………っそ、』
そんな素っ気ない恋人の返答に俺は笑う。眠たそうに言うものの、通話を切らないあたり、俺の彼氏はすげぇ優しいし、安心する。
『あした、ってかきょーか。なんかてすとあるとかいってたぞー』
「まじかっ! って、それ昨日の話だよ、柚李ちゃん」
『ちゃんづけすんな、きもちわるい』
「アッハイ」
半分寝惚けてる柚李はそれでも鋭かった。電話の向こうでふぁあと可愛い欠伸が聞こえて思わずクスリと笑う。
『なに、こわいゆめでもみた?』
「いんや、ちょっと昔の夢」
『ふーん』
「でも落ち着いてきた…」
『そりゃあよかった、かんしゃしてよ』
「今日購買で何か奢る」
『いえい』
めちゃくちゃ可愛いな。
なんてつい口から出そうになって慌てて息を飲んだ。ただでさえ安眠妨害してんのに気分まで害しちまったら取り敢えず今日の学校が怖い。
「そろそろ切る」
『ん、もーいーの?』
「うん、ありがと」
『なんの、なんの。そんじゃあね』
プツリと切れた電話。
俺は机の端に置くとベッドに入る。
不思議と瞼が落ちてきた。
少しいい夢が見れそうな気がした
【声、聞きたいと思って】
End