お題小説
□電話越しに彼のセリフ
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【おやすみ、また明日】×掌にKissを
少しだけ暇になったお話
プルルルルルル――、プルルルルルル――。
コールが続く。
相手が出る気配はない。
当たり前だ。
蒼は今仕事中なんだから。
最近会えてない。
今の時期はホストの稼ぎ時らしい。正直仕事内容もシフト事情も知ってる俺としては毎日が稼ぎ時じゃないのかと疑問だったがホストにも色々あるらしい。
俺もバイトを詰め込んだ。
暇になったら寂しくなって蒼の店に行こうとするから。よく働くわね、とバイト先の女店長に褒められながらも超過労働になっちゃうかも、と休みを貰ってしまった。
だから、
ツ-ツ-ツ-ツ-――。
“ちょっとだけ”暇になってしまったのだ。
────────────・・・。
「ん、寝てた……」
バイトの疲れだろう。
時間を確認するためにスマホを手に取れば誰かから着信が入っていた。
「あ、」
プルルルルルル――、プルルルルルル――、
ガチャ、
『もしもし、紫安? ごめんな、電話取れなくて』
「……あおだ、あおぉ……」
『おぉう、大丈夫かあ…?』
そんな風に笑った蒼の周りはとてもうるさい。まだ店にいるのだろう。それでもこうして電話を掛けてくれたのは俺が滅多に電話なんかしないのと最近会えてない反動だろうか。
『んー、紫安明日空いてる?』
「やすみもらった」
『お、やったな。実は俺も』
「まじかあ……やったぁ……」
『……もしかして紫安眠い?』
「うんにゃ? ねおきぃ」
『もう深夜だからそのまま寝ちゃえよ。紫安すげぇ眠そうだぞ』
「うぅん、わかったぁ……」
じゃあね、と電話を切る間際に蒼が言った言葉に俺は暫く固まった。会えてないからとても寂しかったのにその言葉は反則だ。
────おやすみ、また明日な。
なんて。
「眠気吹っ飛んだわ、ばーか…」
【おやすみ、また明日】
End