お題小説

□初々しい恋10題
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公認ストーカー】×それでいいから


親友に紹介するお話














「和湖、何それ」

親友の言葉に俺は料理の手を止める。
なにそれって何が?

「何がって…その背中にくっついてるの何」

そういえば親友は初めましてだっけか。
そこまで気付いて俺はくっつき虫の真弦を払い落とす。

「んん〜、わんこ痛い」

「包丁持ってんだ、危ないでしょ」

「……ツッコミ待ち?」

「何の話?」

文句を言う真弦をマテさせていれば親友がぽそりと呟く。ツッコミ待ちとは。

「あー、津神 真弦。同居人で恋人。
真弦、コイツは直峯 凉(ただみね りょう)。俺の親ゆ…………真弦?」

じー、と親友を見つめる真弦。
妹にも同じことしてたし、いつもの観察だろ。若干戸惑っている親友に好きにさせてやって、と声を掛けてから野菜を切っていく。

「男同士だとか野暮な事言うつもりとかねぇけど何お前、わんことか呼ばれてんのか」

「うるせぇ、何度教えてもそれだけは直んねぇの」

「わんこは、」

「んあ?」

「わんこは今日、朝から厚切りのベーコン焼いて目玉焼きとご飯と味噌汁と一緒に食べて歯磨きしてからアイス食べてたのー。それからお友達にメールして和華(わか)ちゃんと部屋の掃除してアナタを迎えて今なの。そわそわもいつもよりちょっと多かったの。僕の方がわんこの事知ってるんだよー」


こいつがこんなに流暢に話してるの初めて聞いたかも。なんて思いながら冷蔵庫の肉を取り出す。


「……ストーカーか何かか?」

「公認のな」

「何それ新しい」


いつも通りのやり取りをしていればまた親友に喧嘩を売った真弦はどうやら親友の『親友』という立ち位置に嫉妬したらしい。
いや、お前恋人じゃん。

なんて敵対心むき出しだったくせに昼飯食べてゲームしたらすっかり仲良くなってた。全く…気紛れでちょっと子供っぽい恋人には困ったもんだ。





【公認ストーカー】




End
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