お題小説
□初々しい恋10題
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【終わらない恋になれ】×寂しがり屋のウサギです
陸飛から見た二人のお話
「先輩! おはようございます!」
「寝てる」
「はっ! すいませんっ・・・スープ作りますね」
休日。
ヨーグルトとその他諸々足りなかったものを買ってきた謙人は嬉しそうにやってきた。同室者に先輩の部屋に移動したらいいのに、とボヤかれているらしいが俺がいるから無理な話である。
俺から見た二人は・・・。
何というか恋人らしくはない。まぁでもお互いが満足ならそれでいいんじゃないかと思ってる。
思っているけども。
それをイジらないのか聞かれたら。
まぁ答えは否である。
「謙人って弘典にキスしたいと思わねぇの」
「え、キスっすか」
お、意外。
何か変に純情ぶって「キ・・・! キスっすか!?」とか言って今作ってるスープ零すかと思ったのに。
「そう、キス」
「いつも先輩が寝ちゃう前に額にキスしてるじゃないっすか」
アホかコイツ。
恋人のキスつったら額にキスとかいう甘っちょろいもんじゃねぇでしょ。
「何なんすか、急に」
「お前らの恋人らしい所を見て俺は安心したい」
「はぇ?」
意味が分からないと声を零す謙人に俺は頬杖をつく。時々弘典がコイツに甘えたそうにしている時もあるから気持ちが冷めてる訳でも無いんだろうが・・・何か釈然としない。
「まぁ陸飛先輩だから言うっすけど・・・先輩から止められてんですよね、キス」
「はあ? 初耳」
「知ってたら怖ぇっすよ。・・・自分からしたいらしいっすよ。だから俺は待て状態です」
スープを小皿に少し入れて俺に差し出した謙人はそれでも満足そうに言った。
これ、結局惚気られたのか俺は。あー、幸せそうで何よりだよ。
「ん、ちょっと薄い」
「了解っす」
小皿を返した俺は席を立って弘典の部屋へ入ろうとした。
「あ、陸飛先輩」
「あー?」
「先輩が寝てる間にキスしてんのは内緒っすよ」
・・・・・・俺が内緒にしててもいつかバレる奴だから要観察。なんて。
「ヘマしてバレんなよ」
「陸飛先輩が言うと怖ぇっすよ」
恋人らしくない二人をこれから先もからかっていく所存である。
【終わらない恋になれ】
End