お題小説
□初々しい恋10題
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【きっと夢中にさせるから】×コワイモノ
痴漢に襲われて助けられるお話
勘違いだと言ってくれ。
この感覚はもしかしなくても
痴漢
というやつだろうか。
今日は委員会があって終わるのが遅かった。
俺は部活に入ってないから散々こき使われて結局夜の8時。
急いで乗った電車には案外人はまだ結構乗っていて、家に着くまでに各駅で止まった電車にはかなりの人が乗った。
暑苦しいな、と開かないドアの方へ進み一息ついていると、さわさわ とお尻を撫でる手があったというわけだ。
最初は勘違いかと思ったがだんだんその手は上へ上がってきて胸の突起を弄り始めたのである。
「ん、……は、やめ…」
「あれれ? 男の子なのにこんなところ感じちゃうんだね」
「うっさい…手、はな、せ……んぅ、」
体を這いずり回る手が気持ち悪いはずなのに何故か感じてしまう。
この痴漢野郎も嫌だし、こんな奴に感じる俺も嫌だった。誰か……助けて。
「ねぇ、その辺にしといてよ」
冷たく震え上がるような声。
俺はこの声を知ってる。何度か聞いた事のある声。普段は優しいのに怒るととても怖い人の声。
「れ、んや……」
「あんま調子乗ってると捥ぐから」
「ヒィッ!!」
男はかなりデカイ悲鳴を上げるとちょうど開いたドアから出ていってしまった。
勿論電車の中は騒然。
俺も手を引かれて降りることになった。
「全く…俺が居なかったらどうしてたんだよ」
「ごめん・・・」
近くの公園まで行き、廉弥に抱き締められていた。
「はぁ…………泣きたきゃ泣きな。もう大丈夫だから」
「……うぅ、ひっく、ぅあ、」
押し殺している泣き声が増す度に強くなる腕に安堵しながら俺は少しだけあの出来事を忘れる事が出来たのだった。
【きっと夢中にさせるから】
End