短編 壱
□死んだ目主
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ひとりぼっち
キラキラと輝く髪と整った顔立ち。
波風ミナトは俺の初恋。
そして、その生命は初めて出来た息子を守る為に儚く散る。
……俺が『読んだ』知識である。
「ミナトー!早くするってばね!」
「はいはい、分かったよクシナ」
俺がこの世界に生まれ直してもう何十年経ったろう。
ミナトとクシナは原作通り、仲良さげで。俺は彼らと同期なんだが…、覚えてもらってはいないんだろうな。
まだはたけカカシに写輪眼が無いしうちはオビトが木の葉に居るから俺の初恋の人が死ぬのはまだまだ先だろう。
ガクン、
嗚呼、まただ―――、
目の前が歪んでグラグラと揺れる。
俺が生まれ直したと自覚してから現れ始めた症状。
ドクドクと煩い胸を押さえながら曲がり角を曲がった。
人通りの少ないそこに腰を下ろして胸の動悸が治まるまで待った。
「……一体何なんだ」
俺はただ不規則に鳴り響く鼓動に舌打ちした。
────────────────…
そして。
何故か俺は…
「オビトっ!!!」
その腕の中に岩に押し潰されて死んだ事になるはずだったうちはオビトを抱えていた。既にカカシに眼はやってしまったようだがな。
こうなるまでに色々あったが、まぁ割愛しよう。暗部の仮面もしてるし大丈夫だろう―――、
ドクン―――!
こんな時に────!
「うっ……っく、」
「あんちゃん?」
オビトとカカシ、リンを連れて洞窟から抜け出した、のはいいが。
「う、……はぁはぁ」
「お兄さん、大丈夫…!?」
ドクドクと鳴り響く鼓動はいつもよりずっと酷くて。
でも遠くから近づいてくるミナトのチャクラに俺は立ち上がる。
「行け、波風ミナトだ」
「でもお兄さん、酷い汗!それにオビトを助けてくれたのにっ!」
「いいから行けっ!!……ごほ、」
俺の声にビクリと震えたリンとオビトはミナトの元へ行ってしまったがそれでも動かないチャクラが一つ。
「お兄さん、これ飲んで。少しでも楽になる」
「……ごほ、かはっ、いいから、行けよ……」
カカシはそれでも動かない。
俺は次第に目が霞んでくるのを感じた。
そうして波風ミナトのチャクラが近付いてくることも知らずに気を失ってしまった。
「……っ!?お兄さん!お兄さんしっかりして!」
End