海賊 2
□弐:白ひげ海賊団
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「平気かよい」
マルコの問いに青年は首を縦に振る。
かの海軍大将に手も足も出させなかった彼にこんな傷はあまり気にならないらしかった。
「お前、名前は」
すると青年はマルコの掌にさらりと指を走らせ〈リト〉と書いた。
リト……それが彼の名前。
「口が聞けねぇのかい」
マルコの問いにリトはふるふると首を振る。あまり多くを語ろうとしない彼は昔なにかあったのかもしれないと深く聞こうとしないマルコにリトは掌に〈寝てもいいか?〉と書いた。
「あぁ、あとで四番隊にメシでも作らせるよい」
〈ありがとう〉
リトは身体を横にしてゆっくりと目を閉じた。彼の身体から力が抜けて小さく寝息が聞こえるとマルコは医務室から出た。
*
《……白髭、私は彼奴の為に生きると決めた。
だが彼奴もお前の『息子』達と同じでかなり無理しいなのだ。もし私に何かあったら彼奴を頼んでも構わないだろうか。それがエースという青年を助けた御礼で構わない》
「グラララ……、あの小僧はそれで納得しねェだろ」
《はは、そうかもしれないな。何せ彼奴は……、一度決めたらそれを絶対に歪めない。必ずやり遂げる男だから。だから、私が居なくなったらきっと無理をする。そりゃあもう痛々しい程に》
シロは白ひげから勧められた酒を飲みながら少し遠くを見つめる。医務室で治療を受けているであろう相棒を想い、風にその名を乗せる。
それが聞こえた白ひげは「グラララ…」と静かに笑った。
「リト。それが小僧の名か」
《嗚呼》
「いい名だ」
《……そうだろう。彼奴が唯一自慢するモノだからな》
シロは酒瓶を器用に口で持ち、傾けてから中の酒を飲んだ。《いい酒だ》と少しほろ酔いになりながら涼しい潮風に目を閉じる。
まだ周りはガヤガヤと煩いがそれもまたシロを夢の世界へと連れていったのだった。
「グラララ…お前も随分疲れていたんだろう。ジョズ、医務室に運んでやれ。明日には出航だ」
“親父”の言葉に“息子”達が立ち上がった。