海賊 2
□弐:白ひげ海賊団
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何人かの隊長に手合わせしてくれと言われ、そちらに歩き出した時、シロがリトの体を尻尾で止めた。
何をするんだ、という目でシロを見るとシロもリトを何をしてるんだ、という目で見ていた。
《全くお前は……、足に負担をかけると良くない。何でもかんでも誘いに乗ろうとするな》
「どこか怪我でもしてるの?」
白ひげ海賊団十二番隊隊長ハルタが武器を手にしながらも心配そうに聞く。
《そこの島で阿呆な海賊共に追われて足を折ったのだ。悪いが、これ以上の手合わせは私が許さない》
厳しい口調で言ったシロに隊長格らは困惑の表情を浮かべ、足が折れている状態で1000人以上も相手にしたのかと目の前のリトに拍手を送りたくなった。
「グラララ…、船医を呼べ。命の恩人だ、丁重に扱え」
《……寛容な船長だ、そういうつもりで言ったのではないのだがな》
「構わねェよ、知らねぇ筈の俺の“息子”を何の迷いもなく救ってくれた奴だ、悪いやつじゃない」
《……だとよ、休ませて貰え》
そう言ったシロにコクリと頷いたリトにマルコが船内へ案内する。
それを見送ったシロは何やら周りから熱い視線を感じた。どうやらゆらゆらと揺れる自分の尾に興味を示したクルー達らしい。
しかしながらまだ少し警戒しているシロからしてみれば可愛いガキ共にニヤリと笑った。
《私の名はシロ。管狐の一種でな、この姿は変化した姿だ。私の相棒の傷が癒えるまで世話になるぞ》
ガキ共の歓声が船を揺らした。
*
「こりゃあ、随分無茶したな……。
折れた所から内出血まで起こしてやがる。少し痛いだろうが我慢しろよ」
船医の苦々しい言葉に青年はコクリと頷いた。その横でマルコが治療される青年の様子を見ていた。
マルコはまだ名前も知らない彼が表情を変えずに治療されているのを見て痛覚が無いんじゃないかと疑っていたが、微かに手を握り締める様子からしてちゃんと痛みは感じているのだと少し安堵した。
「これで、よし……と。
暫くは歩き回らず安静にな。どこかに行きたい時はあの車椅子を使うといい。じゃあマルコあとは頼んだぞ」
船医は治療道具やカルテを片付けると部屋を出ていった。部屋にはマルコと彼の二人が残された。