茜色の珠

□H×H 1 獣の森
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目を覚ますと、私は何故か
ベッドに横たわっていた

見たことのない風景と
感じたことのない空気が
そこには確かに存在していて

ここはどこなのか、なんで自分が
こんなところにいるのか、
考えてもなにも思い出せないし
状況が、全く把握できないのだ

というより、思い出せる事が
なに1つ思いつかない

自分が何者なのかも
自分の名前さえも思い出せない

うん?これがぞくにいう
記 憶 喪 失 ってやつなんじゃ…?


「うそでしょ…」


言葉自体はなんだって思いつくし
記憶喪失って言葉も、
もちろんわかっているのに、
なんで自分の事だけがこんなにも
綺麗さっぱり抜け落ちているんだろうか

謎でしかないけれど、
正直今はそんなのはどうでもいいや

思い出せないものは思い出せないのだから
無理に思い出そうとするのは、
取り敢えずやめてみよう

今最も重要なのは私はなんでここにいて
ここがどこなのか、という点だ

少し頭は痛いけれどそれがわからなければ何も分からないままだし

とにかくここがどこなのかは
わかっておかなくっちゃ

そんなことを考えていたら
部屋のドアがガチャという音を立てて
開いたのがわかった


「ん?おーお前、目覚めたか」


私に話しかけてきたのは
なんだかあんまり綺麗じゃない
気さくなおじさん?だった

怪しい物を見る目で睨みつけて
いると笑いながら私に話しかけてきた


「ははっそんなに睨むなよ
俺は別にお前の敵でもねぇし
何か危害を与える気もねぇから
安心しろ」

「(怪しい)…私はどうしてこんなところに?っていうかここはどこですか、そしてあんたは誰」

「何だ、お前何も覚えてねえのか」

「…??」

「お前は、獣の森で1人ぶっ倒れてたんだよ。放っておいても良かったんだが、それで死なれても気分良くねえし、そこで仕方なく近くにあるホテルにお前を連れてきたんだ。俺が偶然仕事であそこに居なければお前は今頃餌になってたかもな。」


獣の森?何で私はそんなところに
いたんだろう
ていうかそんなところ私は知らないし

はぁー…この調子じゃ多分
ここがどこかなんて聞いても
当然のようにわからないんだろうなぁ

困った様に
私がうーんと考えてるのを見て
おじさんは笑って私に言った


「お前行く当てはあるのか?」

「えーっと、いえ…特には」

「名前は?」

「……名前…」

「なんだお前名前も覚えてねえのか」


そう聞かれた私は何も言わずに
小さくコクッと頷いた


「そうか、俺はジン=フリークス
ハンターだ仕事も丁度終わったし
しばらくお前をここに泊めてやる
感謝しろよ」

「えっいや迷惑になるのでだいじょ」

「うるせえ俺が決めたんだ」


断ろうとしたのに食い気味で
遮られてしまっては何も言えない

て、いうか俺が決めたんだって
結構勝手な事言ってない??


「んーでも名前がねえのは
不便だな〜」

「…はぁ」


この自分勝手おじさんを
止める術は無いようなので
もう諦めて話を聞くことにした


「うーん。あ!そうだお前の名前
" アカネ " なんてどうだ?」

「アカネ…」

「そーだ、なかなかいい名前だろ?
お前の目は綺麗な茜色だし、ぴったりだ!」

「茜色…、アカネ」


なんだかわからないけど
その名前を聞いて、とても暖かい
気持ちになったのだ

自分の目の色が茜色だって事は
もちろん今言われて知ったけど

なんだか、私自身も気に入った

私は少し嬉しそうにそう呟くと
満足そうにジンという男は言う


「じゃあお前は今日からアカネ、な
俺のことは気軽にジンさんとでも呼んでくれ」


私は小さくコクッと頷いて、笑った
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