Story F
□奪う彼と守る彼と私2
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「雨・・・」
今日は午前中から街にあるショッピングモールまで1人で買い物来ていた。
天気予報では雨なんて言ってなかったのに。
すぐやむかな、傘買おうかな。
入口付近の屋根があるところに移動しながら悩む。
どっかで時間潰しながら様子見ようかな。
近くにあった店舗案内板を見ながらカフェを探していると声をかけられた。
「名前じゃねーか、何してんだ?」
山崎くんだ。ピッと背筋が伸びる。
あの日から彼は本当にすごかった。
隙あらばガンガン攻めてくる。その場に遙がいようがいまいが関係ないらしい。
私はと言うと、その対応に困り果てている。何度かハッキリと断ったのだが、イエスしか聞かねーとかなんとか!
つまり、山崎くんが飽きるのを待つか、私が山崎くんを好きになるかの二択しかないと気づいた。
「や、山崎くん、偶然だね。こんなところで・・・」
彼1人でいるところから推測して、絡まれないために私は早く帰るべきだと判断した。
「あぁ、ちょっと本屋に用事があってな。お前は?もう帰りか?」
「そうなの!雨振って来たし早く帰らないと!」
じゃ!と逃げる体制を整えるのも虚しく右手を掴まれて、そりゃよかった。付き合えよ。とあっけなく連行される。
今から遙の家に行かないと!と抵抗するも
「今電話しろ、俺とデートになったから行けなくなったってな。」
ニヒルに笑う彼に言葉も出ずに冷や汗だけが流れた。
その後遙のケータイに電話するも出らず、家にかけても出なかった。
次に真琴のケータイに電話する。
「もしもし?真琴?私。遙いる?」
「あぁ名前か。ハルはいないよ」
どうしたの?
と聞いてくる真琴に今できる精一杯のSOSを込めて言葉に乗せる。
「あのね、その、買い物き来たら、山崎くんと会って、捕まっちゃって」
捕まったってひどいな。って、本当のことだもん!
「・・・えっと、遙は電話にでないから、真琴のとこかな、って」
すぐ横で山崎くんが聞いてるから堂々と助けてなんて言えない。
ケータイ取り上げられて切られるのがオチだ。
「その、ちょっと山崎くんと、買い物することになって・・・」
真琴がSOSに気づいてくれることを祈るように、言葉に含みを持たせる。
「・・・わかった。ハルを見つけたらそっちに行かせるよ。だからそれまで頑張るんだよ。」
よかった。伝わった。
うん、ごめんね。ありがとう。と電話を切ってカバンにしまう。
待ってましたと言わんばかりに山崎くんが私の右手をからめ取った。
「とりあえず本屋行こうぜ」
ニッと笑って手を引いて本屋へ向かった。