Story F
□奪う彼と守る彼と私
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困った。
今私は人生で数度訪れると言われているモテ期が来ているのかもしれない。
「番号教えろ」
目の前に迫る彼、山崎宗介くんはついさっき初めて会って自己紹介したばかりだ。
地元のスイミングスクールで行われるフェスに遙達が所属する水泳部が出ると聞いて着いてきたらこれだ。
私達より少し遅れて来た鮫柄の水泳部。凛と真琴と遙と話していたら、山崎くんが凛に何か話したら凛が、あぁと言って私を紹介した。
どうも、と頭を下げると凛は山崎くんを紹介してくれた。
ジト目で山崎くんに見られて、ビビって近くにいた真琴の後ろに隠れた。
凛が、宗介ちったぁ笑えよと言ってくれたがまだ見てる!
真琴も苦笑いしながら、山崎くんにどうかした?ってきいてくれたけどスルーだ。
真琴の後ろでオロオロしてると、山崎くんは真琴と遙を見てから一言。
「お前橘と付き合ってるのか?」
真琴も私も凛も背筋が凍った。
とんだ爆弾を落としてくれた山崎くんは固まった私達に、ん?違うのか?なんてひょうひょうとしてる。
違うよ!違うんだよ!山崎くん!
横見て、横!視線で人を刺せそうなぐらい睨んでる彼と私は付き合ってるんだよ!
なんて言えない。口を開いた瞬間彼の鋭い視線が私に移った。
ひぃ!と出かかった言葉を飲み込む。
「わ、私は遙と、付き合ってます・・・」尻すぼみになりながら言った言葉になぜか山崎くんが嫌そうな顔をした。
チッ、七瀬かよ
小さく発した言葉はキレイに私達のもとまで届いて、もう遙の方を見る勇気はない。
どうしようか焦っていると
「番号教えろ」
と聞こえ、俯いていた顔を上げると
回り込んで私の目の前にきた山崎くん。
「え、だ、だから、私ははる「番号教えろ」・・・り、凛!助けて!」
彼が何を考えてるのか理解できずに凛に助けを求めると、腕を掴まれた。
「だから、七瀬はやめて俺にしとけ」
彼の言いたいことを理解した瞬間、顔が熱くなった。
遙にこんなに迫られたことはない。つまり、産まれて初めてアタックされているのだ。
ストレートな言い方に恥ずかしくなって俯いて、握られた手を振りほどこうともがく。
遙を見るとさっきよりも怖い顔で山崎くんを睨んでる。
「は、はるか・・・!」
半べそかきながら弱々しく助けを求めると、ズカズカ私と山崎くんの間に立ちとんでもないことを言い始めた。
「お前にこいつは無理だ。やめておけ。」
「は?なんでお前の「いいか、こいつはすぐ真琴と凛に甘えて泣きつく。嬉しかったら抱きつきもする。平気で真琴と2人で買い物にも行く。なのに、ヤキモチばっか妬く、あれしろこれしろ我儘ばっか、家事もできなければ、掃除もできない。俺が起こさないといつまでもグータラ寝てる。とんでもない甘ったれだ。」・・・」
パッと私を掴んでいた山崎くんの手を遙は振り払った。
「こんなやつ許せるのも面倒見れるのも俺だけだ。だから、お前には無理だ。」
途中まで、グゥの音も出ないぐらいの事実を述べられてショックと反省と怒りがごちゃごちゃしてたけど、どうでもよくなった。
遙がこんなこと言ってくれるなんて!
最初で最後かもしれない。
嬉しくて後ろから遙に思いっきり抱きつく。
今日は幸せな日だ!
なんて噛みしめてると鼻で笑った声がした
「上等だ。それぐらい面倒見てやる。覚悟しとけよ」
最後は私に向けられた言葉なのか、遙に向けた言葉なのかわからなかったけど、横から見てた真琴と凛の顔が遙の顔を見て顔面蒼白になっている。
「俺から奪えるならやってみろ」
その日から山崎くんのクールな彼からは考えられないぐらい熱い猛アタックと、淡白で自由だった遙の愛が詰まった束縛が始まったのは言うまでもない。
END
初、鮫柄から宗介でした。
宗介は追われるより、追う派なイメージ。
そのうち凛ちゃんも書いてみたいな。