Story F

□先輩と私
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「渚先輩はどうしたら私のこと見てくれますかね?」





高校に入学して部活動紹介の水泳部にとてつもなく惹かれた。

部長の僧帽筋も素敵。
副部長の上腕三頭筋も素敵。
書記の三角筋と上腕二頭筋もしかり。
でも忘れられないのが
会計の葉月渚先輩。
1番最初に登場して一目惚れだった。
筋肉好きの私が部長でも、副部長でも、書記でもない。
女の子みたいに可愛らしい、彼を好きになってしまった。





そこからの私は早かった。
その日のうちに天方先生に入部届けを提出し、水泳部へ向かった。







「新入部員の苗字名前ちゃん、1年生です!マネージャーとして入部してくれました!」



松岡先輩が、着替えが終わったであろう部室へ突撃し紹介してくれた。




「よろしくお願いします!」


「よろしくね、名前ちゃん。」
私の言葉に部長が優しく笑って返してくれた。その横ではしゃぎ出す葉月先輩!可愛い!


「わー!僕達も先輩だよ!怜ちゃん!」
「嬉しいです!よろしくお願いします。」





















そう、すでにあの日から5ヶ月も過ぎた。半袖では肌寒くなってきて長袖を着る季節だ。
今年の水泳部は全国大会まで出場し、大きな功績を残し、3年生は引退した。でも遙先輩は体が鈍ると言って筋トレのために、真琴先輩はそんな遙先輩に引っ付いて結局いつものメンバーで部活をしている。



この5ヶ月間、私なりに押しまくったつもりだ。なのに、渚先輩はのらりくらり。万策は尽きた。
だからこうして渚先輩と怜先輩が帰った後に先輩方に相談することになった。



「ここまでスルーされると心折れそうです、私。」


部室の椅子に座り、目の前の机に項垂れる。
隣に座った江先輩が優しく背中をさすってくれる。


「でも名前ちゃん今までいろいろ試してたからなぁ、他に何かあるかな?」
んーと言いながら向かいに座った真琴先輩は考えてくれてるけど、真琴先輩の横に座ってる遙先輩はどうでもよさそうな顔してる。

「遙先輩めんどくさいなんて思わないでくださいよ」


「・・・思ってない」


「じゃぁ早く帰りたいって思わないでください。私を助けてください!」



先輩方は幼馴染って聞いたから、何か知ってるかと思って・・・



「渚は年上が好きだ」

「・・・え」

「真琴、帰るぞ」

「ちょっと、ハルぅ」

「一種のアドバイスだろ。それに事実だ」

「は、遙先輩そんなダイレクトに言わなくても」

遙先輩の顔を見て固まる私を江先輩が心配そうに見ている。


「は、はるか先輩の、いじわる」

涙がじわじわ浮かんできて俯いた瞬間にぽたり。机に染み込んでいく。


「明日、俺達の教室に来い」



それだけ言い残して帰ってしまった。
置いていかれた真琴先輩がハッとして、いつでもいいから来てね。と言って遙先輩の後を追って消えた。



「江先輩、先輩達があんなに冷たい人だったなんて、もう涙が止まりません」


江先輩も何か考えるような素振りを見せてから
「きっと先輩達も何か考えがあってあんなこと言ったんだよ。あぁ見えて遙先輩は優しいよ」

遙先輩をフォローする江先輩に拗ねたくなったが、とりあえず明日教室に行ってみようと思う。
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