Story F

□遠距離恋愛
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真琴は最近大学の授業やら、バイトやらで忙しいらしい。


日付けが変わる10分前でも連絡がつかない。
まだバイトが終わっていないんだろう。


私達が大学に進学して1年。
真琴は東京の大学へ、私は地元の大学へ進学した。高校卒業する頃は、寂しい気持ちもあったが私達なら大丈夫!なんてかなり強気だった。



進級してたから真琴はかなり忙しいのか連絡の回数が減った。離れてからなかなか会えないもどかしさに不安になることもあったが、会いたいと我儘を言って真琴を困らせることはしたくなかった。



真琴に限って浮気なんて絶対ない。と思う。
言い切れないのはこの1年間離れて植えついた不安のせいだ。

頭では浮気なんて真琴はしないってわかってるのに、些細な変化に敏感になっている。最近では気を張りすぎて疲れてきた。





もう一週間真琴の声を聞いてない。
真琴、早く声を聞かせてこの気持ちを吹き飛ばしてよ。




思っていたより遠距離恋愛はキツかった。






でも好きだから。
別れたくない。絶対。


早く卒業して、大人になったらずっとずっと一緒にいたい。
それまでの我慢なんだ。












物音で目がさめる。いつの間にか寝てしまっていた。時刻は深夜1時。

真琴から電話だ。
急いでケータイを手に取り、通話ボタンを押す。










「名前?」


真琴だ。久しぶりの大好きな声だ。


「真琴・・・バイト?」


「うん、今終わった。ごめんね、ずっと電話できなくて」

先週さらに2人辞めちゃって人手が足りなくてさ。なんて話してる真琴にとても安心する。寂しくても真琴のためなら我慢できる。
声を聞けることはこんなにも幸せなことなんだ。


「お疲れ様」



「寂しい、よね?ごめんね、再来週には新しく人入るみたいだから落ち着くと思う。」


「真琴、無理しないでね。寂しいけど無理して体調崩さないか心配だよ。ちゃんとご飯食べてる?」


クスッと笑われた。
「ありがとう。大丈夫だよ。名前、母さんみたい」


「もー!本当に心配してるんだから」



私もクスッと笑った。
久しぶりの穏やかな気持ちだ。
真琴と話してると癒される。


「名前と話してると疲れを忘れる。名前の声好きだよ」


同じこと考えてる。
真琴、大好き。


「ふふ、声だけ?」


「なっ、わ、わかってるだろー?」


「ちゃんと言ってくれなきゃわかんないなー」

真琴の声の向こう側からはガヤガヤ人の声が聞こえる。またバイトの休憩室にいるのだろう。


「名前、好きだよ」



囁くような少し小さめの声。
胸いっぱいに幸せが広がって、転がり回りたい気分だ。

「私も。真琴大好きだよ」


「ありがとう。」




幸せな気持ちに浸っていると、真琴の後ろから大きな声が聞こえた。


「橘ー!飯食い行こうぜー」


男の人の声が聞こえて、電話切らなきゃって、ちょっと寂しくなったけど仕方ない。


「名前ごめん。呼ばれてるみたいだから切るね、また電話する」


うん、って返事をしようとした瞬間割と近い位置からまた声が聞こえた。


「橘くん!皆待ってるよー!いつものお店だって!って、ごめん、電話中だったんだね」


ドクリ。心臓が嫌な音を立てた。
「あ、ごめん!今行くー!
名前、またね」


「あ、うん」




私の返事を聞くと真琴は電話を切った。
私は耳なケータイをあてたまま、ツーツーツーと切れた音を聞いて一瞬でさめた。







「女の人・・・」
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