Story F
□あのね。
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「そろそろ休憩にしましょう!」
赤い髪を一つにまとめた彼女、江ちゃんが元気よくプールに向かって放った言葉に一斉に部員が反応する。
地方大会を控えているため、練習内容もかなりハードだ。みんなそんな態度とらないから本当にすごい。
「はい。お疲れ様」
プールから上がってベンチに休憩に来る彼らにドリンクとタオルを渡す。
私は橘くんと七瀬くんと同じクラスで、席が隣になった七瀬くんとコミュニケーションをとろうと奮闘する私を橘くんが手助けしてくれて仲良くなった。
おかげで七瀬くんとも仲良くなれた気がする。たぶん。
「ありがとう」
ニコッと笑って受け取る橘くん。
3年の5月なんて引退間際に入部したのは橘くんに誘われた、と言うよりお願いされたからだ。
小さい頃に水泳教室に通っていたことを話したら盛り上がり、去年後輩と水泳部を立ち上げたこと、今度地方大会に出ること。マネージャーの手がほしいこと。
すっかり橘くんに惚れ込んでいた私は断る理由もないため承諾した。
「でもさー、本当名前ちゃんが入ってくれて助かったね!ねぇ江ちゃん!」
「本当に助かってます!ありがとうございます、名前先輩!」
後輩2人にキラキラした笑顔で言われてたいした手助けもできてないことに申し訳ない気持ちもあったが、こんなに感謝してくれているわけだしありがたく受け取ることにした。
「本当ありがとうね、苗字さん」