Story F

□どうしても
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教室の窓からいつの間にかオレンジ色に染まった空をじっと眺めていた。
さっきまで話していた友達は彼氏の部活が終わったから、と帰ったばかりだ。




岩鳶高校水泳部の夏は貴重である。
屋外プールのため使用できる期間が決められてしまう。
今は地方大会進出に向けてプール開きから毎日最終下校時間ギリギリまで練習している。







少しずつ薄暗くなっていく空から、窓の隅っこに見えるプールへ視線を移す。










「頑張ってるなー・・・」



遠くに数人泳いでる姿を見て小さく漏れた。
目標を持ってそれに向かって仲間と一緒に努力している姿は、部活に入っていない私としては少し憧れる。




去年の地方大会でのリレーを応援席から見ていた、部員ではない私があれだけ感動したのだから当人達の感動はもっとすごいものだったんだろう。









今年こそ全国大会へ!
を目標に毎日彼らは頑張っている。














ぼーっと眺めていたプールから人が上がって、部室のある方向へ歩いて行くのが見えた。


「もう終わりかな」




今日もいつも通り最終下校時間ギリギリである。










部室まで迎えに行ったら彼はハの字眉をさらに下げて、少し困った顔をしながら決まった言葉を言う。
「いつもごめんね。先に帰っててもいいんだよ?」




ただでさえ私達はクラスが違って、部活がこんな時間まであるなら会える時間はハッキリ言ってほとんどない。













「少しでも一緒にいたいんだけどな・・・」
彼は違うのかな。

小さく胸が痛む。
去年の夏は何ともなかった。いつからかわからない。彼の言葉に対して疑問を返せず胸の中でどんどんたまっていく。
それでもやっぱり一緒にいたいから。








鞄を持ってゆっくりと教室を出た。
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