Story F2

□溶けるほどに愛して
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ただなんとなく、本棚の下に隠すみたいに箱を置いてたから気になって。

エッチな本だったりして。なんて、ネタにして笑ってやろうと思ってたのに。
開けた瞬間まずいと思った。
女物のネックレス。
数枚のプリクラ。
仲よさそうに寄り添って見たことない、優しい顔がさらに柔らかく笑ってる写真たち。
いきなりバクバク動き出した心臓に手が震えた。

写真の中で寄り添う彼女から真琴の話なんて聞いたことない。
「いつも一緒にいたのに・・・」
真琴の口からも彼女の名前を聞いたことはない。
数枚あるプリクラを手に取ってみれば、書き込まれた日付は半年前。
2人とも幸せそうに笑う姿に息が苦しくなる。
2枚目にはキスしてたり、後ろから彼女を抱きしめて愛しそうに顔を緩める真琴、今日で付き合って1年4ヶ月!なんて落書きも。
知らない。私、何も聞いてない・・・彼女とは3年間同じクラスなのに。
この間彼氏ができたんだと報告してくれた嬉しそうな笑顔。
待って、そうだ、ちょうどその頃に真琴から告白されて付き合うことになったんだ・・・

扉の向こうから階段を上がってくる足音が聞こえて、震える手で慌てて元の位置に戻す。
ヤバイ。全然笑えない。
扉が開くより前にカバンを持って廊下に飛び出した。
「わぁっ!ビックリした・・・名前?どうしたの?」
トレーに飲み物とさっき一緒に買ったお菓子が。真琴の家に来るまですごく楽しかったのに。
勝手に見たからバチが当たったのかな。
「ごめん。用事できちゃった。帰るね」
いつも通りにできない。震える声を抑えるのに必死で真琴の顔を見る余裕もなく階段を急いで降りる。
「えっ!?名前!?」
ローファーを引っ掛けて玄関を出て逃げるように走った。
じわじわ溜まる涙で悪くなる視界。
何も知らないままでいたかった。

真琴の家が見えなくなって階段を一番下まで降りるとケータイに着信。
『名前!?どうしたの急に!今行くからちょっと待って』
ケータイ越しの真琴の声にいろんな気持ちがこんがらがる。
「ごめん、こっち来なくて大丈夫だから。お母さんから今日は早く帰って来いって、連絡あって」
『でももう薄暗いし、心配だから「本当大丈夫だから。ごめんね、また明日」
階段を降りるような弾む真琴の声に無理矢理切り上げた会話。
真琴のことだからここにいたら来てしまうかもしれない。
「・・・帰ろ」
思い返せば真琴はたまにどこかをじっと見つめることがあった。
勝手に七瀬くんを見てるのかと思ってたけど、あの子だったんだ。

あの子を忘れるために、私と付き合った・・・?

そうだよ。じゃないと元カノとの思い出の物をあんなに大事そうに箱に入れてとっておくわけないよ。
下の方には映画の半券とか手紙っぽいのも入ってた。
まだ、好きなんだ。
ズキズキ痛み出した胸にもう涙を止められるわけもなく。
海沿いの道を行きとは全く違う気持ちで駅まで歩いた。
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